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V(ヴァカみたいにどうでも良いこと)を、 N(ねちねち)と書いてみる。 根本的にヴァイオリンとは無関係です。
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「つかさー、蒼ハブまだ5枚しか集まってないんだけど。
 誰か『ボクが盗めば早く集まるよ。』とか、言ってなかったっけ?」
「ジョーカーの取り分、0にすればいいんじゃね?」
「ちょっとwwwww」
クレイとヒゲのジョーカー叩きがヒートアップしていく間にも、
時間は刻一刻と過ぎていく。

時間が過ぎれば補助魔法の効果は弱まり、
当然、ポールの剣にかけられたアスペルシオもとけてしまう。
かといって、モンスターたちが待っていてくれるはずもなく、
気がつくとメンバーは不死者の群れに囲まれていた。
「ヒゲさん! 塩のかけなおしお願いします!」
ポールの声に漸く三人が我に帰る。
クレイが支援を掛け直し、
ジョーカーが背後に迫ったゾンビを払いのける。
「支援切らすなって言ってるそばから、
 何やってるんですか、ヒゲ氏!」
「わしの単独責任ですかwwwwwすみませんwwww」
クレイに叱られ、ゲラゲラ笑いながら誤りながらも、
飛び掛ってきたジャックをスタナーで殴り返し、
再びヒゲが懐の聖水に手を伸ばす。
「アスペル・・・あれ?」
「ヒゲー、次こっちも頼むわー」
ふざけている間にジョーカーの支援も切れてしまったようだ。
しかし、普段がどんなであろうと、
ジョーカーは上位職であるアサシンクロス。
「多数戦は嫌いなんだよ。」と、ぼやきながらも、
2体のナイトメア、4体のグールに対峙しながら、
まだ余裕を見せている。
だが、新米剣士のポールはそうはいかない。
横からクレイがヒールやHLで庇ってくれてはいるが、
左右から攻められ、防御で手一杯になってしまっている。
どちらか片方だけでも切り払えれば良いのだが、
支援の切れたポールの腕では難しい。
「ヒゲ、早く塩かけてやれよ!」
ポールの苦戦を見て取ったジョーカーが指示を出すが、
ヒゲは首を振った。
「すまん、聖水切らしちゃった! ベッキーお願い!」
「うち、端から聖水もって来てないけど。」

ハイプリにあるまじき失態と発言に、
PTメンバー全員が一瞬固まる。
「何やってるんですか、二人とも!!!!!!」
ジョーカーの声が響く。
ゲフェニアダンジョンは主に3層からなる。
1層はか弱い亡霊・ウィスパーや、
名のとおり毒を撒き散らすポイズンスポアと比較的弱いモンスターが生息しており、
3層にはデビルチ・ナイトメアテラー等の悪魔が占領している。
ポール達のいる2層は、
3層で狩りをすることもある高レベルのメンバーにとって、
さほど脅威ではなかったが、
体力の高いゾンビたち、属性の異なるジャックと、
癖の強い生態系であるため、湧いてもまとめて倒しづらい上に、
他ダンジョンの倍近く数が多い。
アスペルシオをが使えなくなったのは大きな痛手であった。
しかし、ポールを除く三人とも、
数多くの戦場を渡り歩いてきた三次職。
隙に付け込まれることなく、
ジョーカーは全てのグールを片付け、
ヒゲはポールに張り付いたドレインリアーを引き剥がす。
その間にクレイはポールを後ろに下がらせ、回復魔法をかけた。
「大丈夫、ポール君?」
強い魔力によって構成されたエネルギー波が、
瞬く間に傷を癒し、呼吸を整える。
「はあ、なんとか。」
体は癒えても、激しい打ち合いで消耗した精神力はすぐには回復しない。
それでも再び前へ出ようとするポールをクレイが押しとどめ、
その意を汲んだヒゲとジョーカーが庇うように前へ立った。

大きなダメージこそ受けないものの、
膠着状態にイラついたジョーカーが怒鳴る。
「何で聖水切らすかな! ハイプリだろお前!」
「この間使って、補充するの忘れてましたwwww」
ヒゲは一時期ある狩場に篭り、
戦利品として聖水を保管するのに必要な空き瓶を、
大量に手に入れたことがある。
空き瓶はそれなりの値段がする為、
仲間からは「空き瓶大富豪」と呼ばれ、
本人も「これで聖水にはもう困りませんwwww」
と、大笑いしていたが、
聖水を作成して狩場に持っていかなければ、
空き瓶はただの空き瓶であり、
ヒゲはただのガラクタ大富豪である。
「本当に使えないな、お前はwwwwwww」
「すいませんwwwwwww」
ジョーカーの怒声に、ヒゲの笑い声が混じり、
もう、怒っているのだか、笑っているのだかわからない。
一人、関係なさそうに、クレイがため息をついた。
「あーあーもーしょうがない、帰りますか。」
「つか、ベッキーは何で聖水持ってきてないのよwwwwww」
「あんな重いもの、必要以上に持ちたくないからです。」
「バロスwwwwwwwww何、その怠惰wwwww」
「うるさいなー うちは非力なんです。
 そもそも、ヒゲ氏が『塩はワシに任せろwww』って言ったんじゃない。」
「やっぱりワシの所為ですかwwwwワシの所為ですねwwwwすいませwww」
狩場で四方を敵に囲まれた状況とは思えない、
ふざけた会話が続く。
暗に彼らの余裕を示しているのかもしれないが、
巻き込まれたほうは気が気ではない。
「クレイさん! 奥から更に敵がきてます!」
悲鳴に近い声をポールが上げ、
漸く、「え、マジで?」とジョーカーが振り向く。
「これ以上は流石に一寸きついかなー」
「どうする、ベッキー?」
「もー鬱陶しい、まとめて片付けるわ。」
「はいよ。」
支援に努めていたクレイが、
それまでと異なる呪文を詠唱し始め、
弧を描くように前衛二人が動いて敵を一箇所にまとめていく。

「オーディーンの左目、ティールの右手、フレイヤの貞節、
 全ての奇跡は代償を支払うことにより、発動され・・・」
複雑な言い回しを用いた呪文が朗々と詠唱され、
クレイの両手から練り上げられた魔力が青白い光となって陣を形成していく。
「マグヌスエクソシズム!」
詠唱の終了と共に地面に描かれた魔方陣が、
突き上げるように強い光を放つ。
プリースト唯一の範囲攻撃魔法は、
その使用の難しさと正比例するように絶大な威力を発揮し、
瞬く間に周囲一体の魔物を存在ごと打ち消した。
静かに光が消えた後に残ったのは、
亡者の爪やジャルゴンなど、魔物たちの僅かな遺留物のみ。
その一つを拾い上げながら、何事もなかったかのようにヒゲが言った。
「毎度のことながら、あんなクソ面倒な呪文、よく扱えるよな!」
「まあ、それがうちの存在意義みたいなもんですから。」
MEを打つために、大事なもの、色々切り捨ててきたんだもん。
そう、クレイは事も無げに答えた。
彼女のようにマグヌスエクソシズム、通称MEを扱うプリーストは、
その術と同じくMEプリと呼ばれるが、
プリースト最長の詠唱が必要となる大魔法を使いこなす為、
クレイが犠牲に払ったものも少なくなく、ヒゲとはまた違った苦労をしているらしい。
「聖水忘れても蒼ジェム忘れない辺り、流石ですな。」
と、ジョーカーが感想を述べ、
 「どうせ打つなら、もっと早くしてくださいよー」
と、ポールが苦情を言う。
「ごめんごめん。で、どうするよ、これから。」
クレイの問いに、ジョーカーが素直に帰ろうぜと答える。
「狩りだけならクレイさんのMEだけで余裕だけど、
 それなら、ここくる意味あんまりないしねー」
上位職が3人もいるにもかかわらず、中級ダンジョンを狩場に選んだのは、
ポールにいろいろな狩場を経験させるためである。
アスペルシオが使えなくなった今、ここにいる意味はあまりない。
ジョーカーの意見に残りのメンバーもうなずいた。
「それで、青ハブは結局何枚集まったんですか?」
ポールの質問に、クレイがアイテム袋を除く。
「んー・・・今出たのをあわせて漸く6枚かな。
 できれば4で割れる数欲しかったけど、仕方ない。」
こればっかりは運だからと、クレイが締めくくろうすると、
ジョーカーが得意げにフフリと笑った。
「諦めるのはまだ早いですぜ、お嬢さん。
 ボクのことを忘れてやいませんか?」
その台詞にメンバーが振り返ると、
おもむろにジョーカーは懐から二枚の青ハブを取り出した。
 「さっきの乱戦で、しっかり盗んでおいたのさwww」
おお、と、歓声が上がる。
「やるな、ジョーカー! セコイAXNo.1の名は伊達じゃない!」
「青ハブ2枚ごときでえばらないでください、ジョカさん!」
「何処まで僕に厳しいんですか、あんた達wwwwwwwww」
例え、誉められることをしても、ジョーカーが認められることはあまりない。
「もー、いい加減にしてくださいよ、三人ともー」
流石に見かねてポールが止めに入った時だった。
バサバサと、何処からともなく蝙蝠の羽音が聞こえてくる。
ゲフェニア2Fには、確かに蝙蝠型モンスター・ドレインリアーが生息しているが、
他の蝙蝠と同じく、暗闇の中をひそかに飛び回り人を襲う彼らの羽音は小さく、
近場で耳を済ませても聞こえることはすくない。
これだけはっきりと羽音が聞こえるというのは異様であった。

ゲフェニアダンジョンで蝙蝠の羽音が聞こえる時。
それは、一つのことを意味している。
「ド、ド、ドラキュラーーーー!!!」
最初に見つけたのはポールだった。
大昔の貴族の衣装を身に纏い、
数多くの下級蝙蝠型モンスター・ファミリアを従え、
悠然と進むその姿からは強い妖気が漂っている。
ゲフェニアダンジョン2FMVPボス・ドラキュラである。
これまで数え切れないほどの冒険者達が戦いを挑んだが、
幾ら討ち滅ぼしても、その努力をあざ笑うかのごとく復活し、
未だ気まぐれに現れる。
どこかに本体があって、それを叩かねば駄目だとか、
実はそういう種族が複数いて、一体が復活しているわけでではないなどと、
色々な説があるが、定かではない。
どちらにしろ、専用の対策はおろか、
通常の消耗品すら切らしている今、相手にするには危険すぎる相手であった。

メンバーの中に一瞬の緊張が走る。
一番最初に反応したのはジョーカーであった。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! ドラキュラー! うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
何処かの猫に迫るストーカーの熊よろしく、
奇声を上げて、ドラキュラに突っ込んでいく。
「待て、ジョーカー!」
慌ててヒゲが制止に入る。
「抜け駆けは許さんぞ、ゴラァ!!!」
「止めるんじゃないんですか!?」
ポールの突っ込みもむなしく、二人の後姿はどんどん小さくなっていった。
「クレイさん、どうしましょう?!」
ポールが最後の砦を振り返ると、
ハイプリは顔色一つ変えずに答えた。
「放置で。」

「放置で、いいんですか?」
「いい。ほら、帰るよ。」
「はーい・・・」
クレイの出したワープポータルに乗り、
消え行くゲフェニアの景色を眺めながら、
ポールは、ヒゲが帰宅ポタ用の蒼ジェムを持っているだろうかと考えた。
おそらく、彼らは歩いて帰ることになる。
 

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