V(ヴァカみたいにどうでも良いこと)を、
N(ねちねち)と書いてみる。
根本的にヴァイオリンとは無関係です。
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ポールの叫び声に近い突っ込みに反応したのか、
屍にしか見えないハイプリの片方が、「ううう」と、動き出した。
「ポール君か・・・」
「だ、大丈夫ですか、クレイさん・・・?」
気のせいか、長い白髪が余計に白くなった様だ。
ふらふらと、頭を起こしたクレイが、か細い声で話す。
「悪いんだけどさ・・・うちの腰のバックに・・・
青い錠剤が入ってるから・・・ちょっと出してくれない・・・?」
腰のバックなら、自分でとったほうが早いだろうに、
それすら出来ないほど、疲れてきっているらしい。
その痛々しさにポールは思わず泣きそうになった。
しかし、ジョーカーは冒険者としての経験が長い分、
ポールよりやるべきことを心得ている。
「ボクが」と、すばやく前に出ると、
言われたとおり、腰のバックを探り始めた。
「駄目だよ、ポール君。手当ては一刻を争う場合もあるから、
こういうときはすぐ動かないと。」
「すみません・・・」
ブラッドに注意され、
自分の未熟さをも情けなく感じる。
しかし、ポールが沈む余裕もなく怒声が響いた。
「手前ぇ! どさくさにまぎれて余計なところ触るんじゃねぇ!!」
「すんませwwwwwwww」
瞬間、クレイのこぶしが力一杯ジョーカーの眉間に沈む。
仮面の上からでもクレイの正拳突きは痛い。
ジョーカーが額を押さえて転げまわり、
その横でクレイは再びぐったりと肩を落とし、座り込んだ。
「まったく・・・落ち着いて死んでもいられないわ・・・」
「瀕死じゃなかったんですかwwwwwww」
ジョーカーの非正当的な抗議を無視し、
クレイが改めて腰のバックを探る。
そしてビーカーのような細い薬瓶を取り出すと、
中に入った蒼く丸い錠剤を幾つか口に放り込んだ。
「ヒゲ氏、自分も食べとき。」
錠剤をバリバリと噛み砕きながら、
隣のヒゲをつつくが、まだヒゲはぐったりとして動かない。
「ジョカさん。」
低い声でクレイに命令され、ジョーカーは転げまわるのをやめた。
「へいへい。」
わざとらしく額をさすると、おとなしく錠剤を受け取り、
ヒゲに飲ませようと試みる。
「気安く触んなゴラァ!!!!!!!!!!!!」
再び怒声が響き、今度はヒゲがジョーカーを殴り飛ばす。
「今度は何ですか!!」
ポールが悲鳴を上げると、それに負けない大声でヒゲが叫ぶ。
「ワシは意地でも人前ではガスマスクを脱がない主義だ!!
だって恥ずかしいから!!!!!」
「訳わかんねwwwwwwwwwwwwww」
それまで姿が嘘のようなヒゲにジョーカーが食って掛かり、
ボカスカと喧嘩を始める。
瀕死でも、この連中がおとなしくなることはないのだろうか。
非常識などたばたに、ブラッドがため息をつく。
「ヒゲー 死んでないなら、早く金返してくれよ。」
「ちょっと・・・まってください・・・・」
改めて、ヒゲが両手を突いてその場にへたばりこむが、
こうなってくると、もう、演技にしか見えない。
へたばりこんだヒゲを、座ったままクレイがゲシゲシと蹴る。
「ヒゲ氏、生きてるならこれ食べなさいってばよ。」
「ベッキー・・・どうせ蹴るならヒールで・・・」
「──あぁ?」
「あ、すみません。マジでごめんなさい。」
ちょっとしたネタすらも許す気配もないクレイの低い声に、
珍しくヒゲが真面目に謝る。
それに黙ってクレイが蒼い錠剤を渡し、
ヒゲは器用にガスマスクを動かして、錠剤を口にいれた。
ガリガリガリガリガリガリ・・・
なんとなく、誰も話さないので、錠剤を噛み砕く音だけが響く。
沈黙を破ったのは、やはりヒゲだった。
「うっっっっっっまぁぁぁぁぁっぁい!!!!!!」
「何ですか、ヒゲさん!」
「静かに感想ぐらいいえないわけ、お前。」
いきなり飛び上がって、跳ね回るヒゲに、
ポールが半泣きで問い、ブラッドが冷静に突っ込む。
それをみて、ジョーカーがヒゲに食べさせそこなった錠剤を、
自分の口に放り込んだ。
「あ、マジでうまいわ、これ。」
本当に感心したらしいジョーカーの態度に、
薬剤のスペシャリストであるアルケミストとして見過ごせなかったのか、
ブラッドが不信そうにクレイに問う。
「つか、クレイさん、それ何?」
クレイは少し困ったように答えた。
「出所と、材料の怪しい回復剤。」
「ちょwwwww食べちゃったんですけどwwwwwww」
出所も材料も怪しい代物と聞いて、ジョーカーが毒でも飲んだように騒ぎだす。
「水、水!!」と、暴れるジョーカーに、
食べて問題のあるものを進めたりしないと、クレイが文句を言う。
「それに、効力は確かよ?」
彼女の言葉がうそではない証拠に、ヒゲはあっという間に元気を取り戻し、
なぜかラジオ体操を始めていた。
そんなヒゲを横目で見ながら、なおも不信そうにブラッドは聞く。
「出所が怪しいって、どこで買ってるのよ?」
「うーん、それは下手すると政府の偉い人に捕まっちゃうから、
できれば触れないでいただきたい。」
「そういうことなら、もう聞かないけどさ。」
しぶしぶ、といった態だったが、ブラッドはそのまま引き下がった。
それと同時に、ヒゲがクレイに両手を差し出す。
「ベッキー! もっとちょうだい!」
目の前に差し出された大きな両手を一瞥すると、
クレイは黙って鞄からビーカーを取り出し、
静かに蓋を引っ張った。
ぽんっと、音をあけて蓋が開くと、
ヒゲの期待に満ちた視線を受けたまま、
彼女は黙ってビーカーを顔の前まで持ち上げ、
そして一気に中身を口の中に流し込んだ。
あごの力をフルに使って錠剤を噛み砕きながら、
静かに、そして冷淡に彼女は言う。
「なんか、言った?」
「ヒドスwwwwwwwwwwwwwwwwww」
ヒゲの悲鳴が無駄に響く。
対ジョーカーならばともかく、
クレイがヒゲに対してこういう態度を取ることはまずありえない。
疲れているためなのか、よっぽど機嫌が悪いらしい。
それでも、薬が効いてきたのか、
先ほどよりは、落ち着いた声に戻ってきていた。
「あー まだ具合悪い。ブラッドさん、白スリムもらえる?
代金はヒゲ氏付けで。」
「はいよ。」
「ちょwwwwwwさりげなく何言ってるのwwwwwwwww」
当然、ヒゲが苦情をはさむが、
それ以上に当然のこととして、あっさり切り捨てられる。
「うっさいなー 自分はちょっと黙ってなさいよ。
あと、これ、今回の戦利品なんだけど、代わりに清算してきてもらえる?」
「ほいほい。」
クレイとブラッドの間でどんどん話が進み、
置いてきぼりにされたヒゲが必死で自己アピールに入る。
「ちょwwwwwワシもいるwwwwwワシもいるんですけどwwwww
勝手に話し進めないでwwwwww
ワシは空気ですかwwwwwwwむごしwwwwwwwww」
「うるさいってば。」
ヒゲは必死の自己アピールを軽く流された上に、
最後のクレイの台詞と同時に、
これも当たり前のように入ってきた鳩尾へのチョップで、
再びその場にへたり込む羽目になった。
その横で全く何事もなかったかのように、クレイが白スリムを飲む。
暴れだしたら誰も止められないと噂されるヒゲの全力自己アピールすら、
意に介さず話を進めるクレイは、やはり流石だと、ポールは心の中で再確認した。
こうなってくると、どう話しかけていいのか迷ってしまうのが、
まだギルメンとして、確たる位置を獲得していないポールの弱いところになる。
幸い、ブラッド特製ホワイトスリムポーション、略して白スリムは、
現存する回復薬として重さ・効力含めて最高級の代物であり、
ポールが普段使うレッドポーション(一個20z)の140倍の値段がするだけあって、
その効果は絶大であった。
クレイが再び口を開いた時には、声のトーンを含め、
もとの落ち着いたハイプリに戻っていた。
「全く、酷い目にあったわ。
半病人にやらせることじゃないよ、ニブル特攻3日間ツアーなんて。」
「お疲れさんですー」
全く労わる様子なく、ジョーカーが答え、
ポールが、
「クレイさんって病人なんですか?」
と、不思議そうに尋ねた。そんな話は、まだ聞いたことがない。
「正確に言うと病み上がりね。一年ぐらい入院生活してて、
ポール君と会ったのが、退院直後かな。」
「それじゃあ、まだ2ヶ月も経ってないじゃないですか。
ニブルって、高レベル狩り場でしょう?
そんなところ行って、大丈夫なんですか?」
暗い国・ニブルヘイム。
南国にある幻想の島・コモドから更にジャングルの奥に進み、
ウータン族の村・ウンバラ近くにある、
大きな木・世界樹を上ると、いつの間にかたどり着くという死者の国である。
神話に出る、本物のニブルヘイムであれば、
生身の人間が立ち入れることはありえないので、
おそらく、よく似ているだけ、
もしくはニブルヘイムの一歩手前のような場所ではないかと推測されているが、
いまだ、真実は定かではない。
だが、決して太陽が昇ることがない薄暗い森の中を、
ここでしか見られない、強力な魔物の攻撃をかいくぐって進むと、
誰が立てたとも知れない廃墟があるという。
そして、そこで生前知り合いだった者の姿を見たという話が、
今だ絶えないのも、また事実である。
悪魔を排し、不死者を滅するMEプリの最終狩場とは言われており、
ハイプリーストの試験に受かる前のクレイが日々通った狩場でもあるが、
アクセスが悪く、非常に危険な場所のため、実際にそこで狩りをするものは少ない。
お化けが嫌いで、クレイたちに会うまで初心者向けと知りながら、
ゲフェニアダンジョン、フェイヨン地下洞窟、
アルベルタの沈没船などをパスしてきたポールには、
頼まれても行きたくないところであった。
しかし、あっさりと、クレイは答える。
「まあ、うちはあそこで育ったようなもんだし、
ヒゲ氏と手っ取り早く大金稼ぐとなると、他に思いつかなかったしねえ。
楽じゃないけど、そんなにキツくもなかったよ、実際。」
ニブルに生息する魔物たちが身につける赤いスカーフや、
糸巻き、鎧の欠片等は、他では見られない程魔力を含み、
様々な魔法道具への加工に適するため、結構な値段が付くのだという。
「それに今回は締め切りまでが長かったし、借金の金額は3Mだけど、
3日もあればなんとか。+αも稼いでこれたと思うよ。」
経費を考えなきゃ一人、3.5Mぐらいいったんじゃないー?と、
言うクレイに、
「3.5M!!」と、ポールが大金に心底驚くと、
「え、じゃあ、どうして?」と、ジョーカーが疑問を提示する。
「それなら、何であんなに瀕死の体だったのさ?」
ジョーカーの質問を受けて、一瞬クレイの動きが止まった。
そして、フルフルと震え始めた彼女の肩を見て、嫌な予感を居残り組みは感じ取る。
「そう、そこまでは順調だったのよね、そこまでは。」
あくまで、静かに、クレイはことのしだいを語った。
3日間、適度に休憩を入れながら狩りをし、
目標以上の収穫を上げた二人は、
休憩地のある、死者の街と呼ばれる廃墟街に戻ってきていた。
前記したとおり、誰が何のために作ったのかわからないが、
それなりの概観と内装をそろえた家々が、
街と呼ぶのに不都合のない程度に建てられている。
中央にはレンガ造りの広場と街灯もあり、
街のところどころに魔物がうろついているのと、
いくら待っても朝が来ないことをがなければ、
見ようによっては洒落た街に見えるかもしれない。
しかし、魔物以外の誰とも知れない影や、
突然聞こえる正体不明の悲鳴、街のいたるところに置かれた墓石などと、
人を寄せ付けない要素は多く、
ここに派遣されたカプラ職員はかなりの高確率でノイローゼなど、
ストレスによる障害を起こすという。
そう、ここには株式会社・カプラの職員が派遣されている。
冒険者対象の倉庫を管理したり、
各町への転送サービス、身分証明書へのセーブ位置登録などと、
様々なサービスを提供している便利なカプラであるが、
あろうことか、死者の国・ニブルヘイムにまで、職員を派遣している。
安全問題、職員の人権、社長の独断性など、様々な点で、
たまに社会問題として摘発されるが、
現在のところ、カプラ側が無謀な派遣を改めたことはない。
また、狩場でのカプラによる物資補充は便利であるし、
職員を守るために幾重にも防御魔法を張って作った安全地帯は、
職員以外にも自由に使え、休憩を取るのに最適なのは公然の事実で、
散々利用しておいて何をいまさらと、利用者の側としても強く出れないという事実がある。
したがって、訪れるものは月に一人か二人と、非常に寂れたニブルにも、
職員は依然として派遣され続けていた。
そんな状態だから、久しぶりの訪問者の顔をカプラ嬢はすぐに覚え、
何かと話しかけ、世話を焼こうとした。
それを無碍に断るのはあまりに悪く、
また、黙って去るのもいかがなものかと、
帰り際に挨拶だけはしようと、街に戻った矢先だった。
カプラ支店のあるニブルヘイム中央広場のど真ん中に、
あまたの亡霊を引き連れ、巨大な白馬に乗った異形の騎士を見つけたのは。
ニブルヘイムのMVPボス・ロードオブデスである。
即座に建物の陰に隠れたため、幸いにも発見されず、
二人はこそこそと話し合った。
「やベーよ、あれはやべーよ。
つか、何で、よりにもよって広場にいんのよ。」
「カプラさん、きっと、おびえてるねっ、可哀想~(*TーT)人(TーT*)」
「まあ、防御魔法は完璧だし、今までだって破られたことはないから、
大丈夫だとは思うけど、それより、何でネカマ風なのよ。」
緊急事態においても、あえて明るく勤めようとするヒゲなりの心配りだろうか?
一応突っ込んだものの、クレイは取りあえず無視することにした。
「しっかし、ルードやら、キューブやら、彷徨う者やら、うじゃうじゃ沸いてるねー
関わりたくないわー あいつら、うっとうしすぎるもん。」
「それよりさぁ、それよりさぁ、ベッキー、あれって、
ようはニブルヘイムの王様だよねっ?!」
「え? そりゃまあ、一応名前は死者の王だけど。」
「ニブルヘイムの王様って言ったら、やっぱりヘル様だよねっ?!
ってことは、あれって中身はヘル様なんだっ!!
ヘル様はかわいいよねっ!」
ルーンミットガッツ王国の住民のほとんどが信仰するのは、
古くは海の勇者ヴァイキング達の神であったというオーディンや、
トール、フレイヤ、ヴァルドルなどであるが、
ヘルは彼らと対立する巨人族に属する死者の女神である。
神話によれば戦場で死んだ戦士はオーディンの住むヴァルハラへ運ばれ、
それ以外の死、たとえば藁の死と呼ばれる老衰・病死などを迎えたものは、
死者の国の女王・ヘルの元へ運ばれるとされている。
一口に死者の国といっても、
正確にはヘルが住むエーリューズニルがあるのはヘルヘイムという場所であり、
ニブルヘイムは川を隔てたその隣となる。
とはいえ、二つは非常によく似た扱いとなっているし、
ニブルヘイムの王もヘルではないということでもないのだが、
正否のみを言えば、ロードオブデスの中身がヘルであるというのは誤りである。
しかし、そんなことを知らないヒゲのトークは全く止まる気配がなかった。
「中身がヘル様で女の子だから略してデス代ちゃんだねっ!」
「いや、それは違・・・」
「デス代ちゃんは、確か、錐かポールアクスを落とすんだよね~」
このとき、ヒゲが考えていることを、正確にクレイは察知した。
「錐か、ポールアクスかあ~^^」
きょうみ ないね
[>ころしてでも うばいとる
あえて、ねる
「ヒゲ氏、ちょっと、まっ・・・!」
「デス代SINEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
クレイの制止は間に合わなかった。
奇声をあげながら突っ込んでくるヒゲに、ロードオブデスたちが気が付かないはずがない。
こうなったら、先手必勝、せめて取り巻きだけでも引き剥がそうと、クレイが詠唱を開始する。
「マグヌスエクソシズムッ!!」
ハイプリの体に眠る魔力と、正確に唱えられた呪文は彼女を裏切ることはない。
即座に聖なる魔方陣を展開し、その絶大なる威力を持って魔物たちを駆逐する。
ロードオブデス自身にも多少は影響を与えたはずだが、
そこは死者の王、その程度で倒れるほど柔ではない。
憤然と背のマントを翻し、うつろな眼窩をクレイに向け、音にならない彷徨をあげた。
死者は喋ることはない。
言葉を持たないもの。それが死者だからだ。
代わりにその肩に乗ったキューブが主の意思を代弁する。
『また、貴様か! この呪われた蛇の子め!!』
チッと、クレイが舌打ちする。
「まーだ覚えてやがったか。脳みそ入ってないくせにしつけーな。」
「ちょwwwwwベッキーwwwwwwお知り合いですかwwwww」
MVPボスと知り合いというのはどういうことか。
思わずネカマ口調を忘れてヒゲが突っ込む。
「そりゃねー 毎日毎日ニブルで狩りしてりゃ、
そのうち嫌でも顔見知りになるわ。他に誰もいないんだから。」
どこまで理由になるのかわからない答えをクレイが返す。
しかし、瞬時に消された分の取り巻きを召喚しなおすと、
毎日顔をあわせただけとは思えない勢いで、ロードオブデスが白馬を駆り、突っ込んできた。
とっさに二人はきびすを返して逃げる。
あからさまに怒っているのがわかる死者の王は、
勝てる勝てないは兎も角、非常に怖い。
予想外の相手の動きに、走りながらもヒゲは相方に聞いた。
「ちょっとwwwww何やったのよ、ベッキーwwwwww」
「何やったって言うか・・・顔会わせる度に、こっちは敵わないから、
手、出さないの知ってて、追っかけてくるからさ。
一度むかついて、待ち伏せて上から襲って、
頭の中に直接ME打ち込んでやったのよね。」
問われて、すごい過去をしれっとクレイが吐く。
「バロスwwwwwwwwwwwwwwwむちゃくちゃやりますねwwwwww」
「流石にあれは効いたらしいわwwwwwww」
笑いながら逃げるハイプリースト二人と、
怒り狂ったMVPボスとその取り巻きの追いかけっこは、町全体を巻き込んだ。
静かな街をひっくり返さんばかりの大騒ぎを、
元々住み着いている魔物たちが黙ってみているはずがない。
気が付いたときには二人の後ろには町中の魔物による、
黒い川が出来ていた。
「やばくないですかwwwwwwこれは流石にやばくないですかwwwwww」
「だから始めにやばいって言ったじゃないwwwwwwwwww」
逃げ込もうにも、カプラ支社からは既に距離が開いており、
ワープポータルを出そうにも、高速詠唱を得意とするクレイにすら、
そんな時間は魔物たちが与えてくれそうにない。
それにしても、クレイが芝生が生えていると言われるほどの、
ハイテンションを見せるのは珍しいなー
そう考えたのが、ヒゲがはっきりと覚えている最後の記憶である。
「今思えば、よく逃げ切れたと思うわ、あれは。」
「カプラさんにも、窓越しにしか挨拶できなかったしなぁ。」
しみじみとクレイが話を閉め、残念そうにヒゲがカプラ嬢との別れを述べた。
「それでも、ちゃんと挨拶してった辺り、流石だよ、あんたら。」
「黒い川に見えるぐらいのニブルのモンスター・・・うひー 俺、行かなくて良かったー」
ジョーカーがあきれて感想を述べ、
ポールはその状況を想像して身震いした。
「でも、まあ、ニブルは良い所だよ。静かだし。
ポール君も今度一緒に行く?」
「遠慮しておきます。」
死にかけるほど、逃げ回らねばならなかったにも拘らず、
後輩を誘うクレイに、初めてポールは不信感を覚えた。
どうすれば、今の話を聞いてニブルに行きたくなるだろう。
ヒゲやジョーカーと付き合って、平気な以上、
この普通に見えるハイプリも本性は怪しいのかもしれない。
そんな、ポールの思いを知ってか知らずか、
クレイはガラリと話題を変え、ヒゲに苦情を言い始めた。
「つかさー ジョカさんもだけどヒゲ氏、ボス見るたびに突っ込むのやめてよー」
「だってさー 金ないんだもん。嫁もお小遣いあげてくんないし。」
「うちもない。ポール君の装備のこと考えても、
ちょっと、まじめにお金稼ぐこと考えないと駄目ね。」
「かといって、転職試験考えると、MPも意識しないと駄目だしな。
つか、ベッキーは何でないのよ。」
「若い男につぎ込んですっからかんになった挙句、
更に請求されてるから。1年のブランクはキッツいわー」
「若い男? ・・・あー、ちゃお君か。元気?」
「お蔭さんで。うちに似ず、元気だし、成績も上々ですよ。」
淡々と語られる会話からは、知らない事実がどんどん浮かび上がってきそうだったが、
ここでブラッドが帰ってきたので、
ポールが詳しく聞くことも、質問をはさむことも出来ず、会話は終わりになった。
「おまたせー 全部売っぱらってきたよー」
「サンキュー ブラッドー」
「ありがとー お疲れ様、ブラッドさん。」
諸手をあげてハイプリ二人がアルケミを迎え、
あ、そうだと、AXが思い出す。
「ブラッド、ついでにボク等の取ってきた植物の茎も買い取ってよ。
1本、10,000zでいいからさ。」
「はははは、一昨日来い、ジョーカー。」
「ちぇっ、じゃあ、相場の値段でいいから、後で頼むよ。」
あっさりとぼったくりを拒否され、AXが引っ込むと、
早速、アルケミが清算と呼ばれる収集品の分配を開始した。
「えっと、取り合えず、売っていいものと悪いものはこっちで判断したよ。
売り上げが全部で7,553,605z。他に呪われたルビーが34個と、
レットジェムストーンが21つに、蜂蜜が42かな。」
「お金以外は、手数料代わりにとって置けよ。」
「サンキュー」
細かい清算を嫌うヒゲの提案に、クレイがうなずき、
ブラッドは素直にそれを受けた。
「じゃあ、お金の細かいのも繰り上げて、
全部で7,560,000zにして、一人3,780,000zと、いうことで。」
「サンキュー」
今度はヒゲと、クレイがブラッドに礼を言う。
「で、クレイさんにはそのまま渡すとして、
ヒゲの分はここから借金を引くな。」
「はいよ!」
ヒゲの借金は青箱100個分。
青箱の相場が先日、大幅に値下がりして一つ35,000zなので、
単純に100倍しても3.5Mで、セットで買った分、割引もあった。
借金を返しても、まだおつりが来るはずである。
ブラッドが早速計算する。
「えっと、まず、この前の借金が3.2Mだろ、
それから、装備の精錬代が足りないって貸したのが400kだろ、
青ジェム買ってきてくれって言われて、代金がまだだから、これが230kだろ、
それから、こないだ売った白ポ代もまだだから、これが350kで、
さっきの白スリム代が2,800zだから、あわせて4,182,800zになるんで・・・」
なんだか、話がおかしな方向になってきた。
「402,800z足らないな。」
ブラッドの下した結論に、クレイが思いっきりヒゲをたたく。
「何やってるのよ、ヒゲ氏!」
「あれwwwwおっかしいなwwwwwwww」
どうやら、ヒゲの忘れた借金があったらしい。
おつりが来るはずだったのに、
逆に更に支払いを請求されることになってしまった。
「どーするんですか、ヒゲさんー」
ポールがあきれたように今後を問い、
「ボクは貸さないぞ! 貸すほどお金ないもん!」
と、ジョーカーが首を横に振った。
「さて、どうしようwwwwwwwwww」
もう、笑うしかないわと言った態のヒゲの隣で、
あからさまなため息をついて、クレイが助け舟を出した。
「どうしようも、こうしようもないでしょうが・・・
仕方ない。ブラッドさん、うちの取り分から、足りない分とってちょうだい。」
えっ、と、周りの場が一瞬固まる。
「駄目だよ、クレイさん。
回復剤代はともかく、ME狩りなら、蒼ジェム代だって相当掛かってるんでしょ?」
「ざっと、3000ぐらい使ったかしらね。」
ブラッドの制止に、クレイが無感情に答える。
因みに蒼ジェムはどこで買うかにもよるが、最も安い露店価格で一つ460z。
3000ともなれば1.38Mと、これでクレイの稼ぎもかなり吹っ飛ぶことになる。
「ME狩りなら、蒼ジェム代は二人で割らないと、割に合わないのに、
この分じゃヒゲからは取れそうにないし、
さらに400kも取ったら、それこそ2Mしか残らないよ?」
2Mともなれば、ポールから見れば大金だが、
危険を冒した見返りとしては少ないのかもしれない。
やり取りされる金額の大きさにポールが目を白黒させている横で、
ブレッドが他人事ながら不満そうに、クレイに進言するが、
それでもクレイは首を横に振った。
「蒼ジェム代は、もう支払済みだから、今引かれるわけじゃないし、
まだ、倉庫に残ってるから、買い足さなくても、しばらく何とかなるし。」
あくまで、ヒゲの負担を引き受けると言い張るクレイに根負けして、
ブラッドは、じゃあ、と2Mをクレイに渡した。
「白スリム代はまけておくわ。」
「ありがとー」
その後、ブラッドはポールとジョーカーから、
植物の茎256個を一つ、1000zで買い取ってくれた。
用事が済んで、プロンティアに帰るブラッドに手を振りながら、ポールは考える。
手元は一気に暖かくなったが、
まだ、ほしい装備を買えるほどではない。
ジョーカーも足りた様子はないし、ヒゲに到っては借金の相手がクレイに代わっただけである。
ポールは一つ、気になった点を、クレイに聞いた。
「クレイさん、この三日間、そろってお金のために狩りしてたのに、
誰一人、金欠から抜け出せてないってことですか?」
「そーね。」
ハイプリのやる気のない返事をききながら、
「世の中って厳しいなあ。」
ポールは、そう思った。
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