忍者ブログ
V(ヴァカみたいにどうでも良いこと)を、 N(ねちねち)と書いてみる。 根本的にヴァイオリンとは無関係です。
[239]  [240]  [241]  [242]  [243]  [244] 
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。



元々、ジュノーカフェはその名の通り、
ジュノーに拠点を置くギルドであり、
彼らが開催している蚤の市も、
ジュノーで執り行われていた。
しかし、数年前、首脳陣が大きく入れ替わったのを機に、
集客の安易な、プロンティアに開催地を移動して久しい。
人の多いプロンティアで行うことにより、
周囲への影響、管理の複雑さなど、
問題も多かったようだが、
今では恙無く進行ができている。
大広場に列になって並ぶ露店を一つずつ眺めながら、
ポールは誰にと言うことなく、頷いていた。
今日、探すべきは新しい防具だった。
先輩方の会議によって、次に入手するのは、
闇属性の防具と決まっていた。

属性付与するバースリーはマツリが譲ってくれるから、
それを付ける鎧をなににするかが、まず問題だった。
「折角だからちょっと良い装備と思ったけど、
 やっぱりさ、メイルで良いのかな?」
「プレートと比べると若干見劣りするけど、
 使いやすさからすると、メイルだよね。」
ジョーカーが口にした防具の名前に、ノエルが頷く。
防御面を重視するクルセイダーならば、
防具に求めるのも耐久性が第一であるが、
軌道力を活かし、大きく動くナイトとしては、
動き易さや重量も重要な点となる。
「グリッタとかも、いいんだけど高いよな。」
「売却時を考えればロングコート、
 フォーマルスーツもありだけどな。」
買うのがポール君じゃなと、ユッシが頭を掻き、
今後を考えればとヒゲが次点を口にするが、却下された。
「ロンコはちょっと防御力がなあ。
 フォーマルは高すぎるよ。」
なによりメインの装備を買おうと言う今から、
処分することを考えなくても良かろうとノエルが言い、
メイルでいいだろうと決定する。
が、マツリが難しい顔で首を傾げた。
「あんな、重いもん、よく使う気になれますな。」
「そりゃ、マツリちゃんには重いかもしれないけどさ。」
ペコペコに乗らず、歩兵として動くマツリには、
確かに重いであろうし、動きも鈍らせるだろう。
だが、使うのはポールだとノエルが改めて言うのに、
マツリはあっさりと頷いた。
「そりゃまあ、そうなんですけどな。」
気にしていたのは、別の点だった。
「ただ、メイルなら、
 10個ぐらい倉庫にあるんすけども。」
「君、持っていないものないのかい!」
何のための対蚤の市会議だと、ノエルが叫んだのに、
いつも通り、飄々とマツリは答えた。
「たまたまっすよ。
 タムラン師匠から戴いたんすが、
 あたしゃ、使いませんしな。」
倉庫を圧迫するので、
そろそろ売り払おうと思っていたところだったらしい。
「本当に、
 マツリちゃんの倉庫は出てこない物ないよね。」
自分が頼んだ物も大概でてくると、
ユッシが複雑な顔をしたが、
当の本人は謙遜するように首を振った。
「そんなこたぁ、ありゃしませんよ。
 雑多なだけで金目のもんはありませんしな。
 ただ、溜まりに溜まった柄の紐3万本と、
 約3000枚のアロエの葉は、
 どうしようかと思ってやすが。」
「売りなよ。」
一応誉めるつもりが、愕然とするよりない返事に、
ハイプリも顔を強ばらせる。
「まあ、雑貨って溜める人はため込むよね。」
ボクはそうでもないけどと、
若干矛先を変えるように、ジョーカーが言い、
ヒゲが尤もらしく同意した。
「ワシの倉庫にも、ガスマスクが30個はあるしな。」
「捨てろよ。」
即座に相方に切り捨てられて、ヒゲは猛然と怒った。
「なにを言うか! 
 あれはワシのソウルフードだぞ!」
「フードって、あれをどうやって食べるんだよ!」
「Foodではない! Hoodだ!」
「どっちにしても間違ってるだろ!!」
「ああもう、はいはい、止め止め。」
いつも通り、喧嘩を始めた二人を、
うんざりとした様子でノエルが止め、
マツリを振り返った。
「それでマツリちゃん、メイルはいくらなら良い?」
「未精錬の相場が200kなんで、150kでどうすかね?」
「じゃあ、バースリーが800kだから、
 950k以下の闇メイルがあったら、
 買いって事で良いね。」
「ご要望がありゃ、+7も用意できやすが・・・」
「もう、黙ってて。」
あれこれ考えても仕方ないと、
先輩が合理的に進めてくれたお陰で、
購入予定がつき、現地へやってきたのだが、
なかなか、目当ての品は見あたらなかった。

「ないなあ。」
「大体メイルなんか、時代遅れだお!
 やっぱり流行はヴァルキュリーだお!」
「それ、いくらすんの。」
他人事だからか、本気なのか知らないが、
超高額装備を要求するチハルに、ポールは首を竦めた。
「俺のお財布は、そんなに裕福じゃないよ。」
予算は最大1Mだよと肩を落とす彼に、
チハルは事も無げに言う。
「そんなの、さっさと騎士になって、
 プリの相方を捕まえれば、どんどん溜まるお!」
「簡単に言ってくれるなあ。」
Gvが終わったらすぐ、転職試験は受けるつもりだし、
テッカのお墨付きももらったとはいえ、
まだ受かると確定したわけではない。
なにより、自分に相方など見つかるのだろうか。

冒険者を続けるにあたり、
効率化や安全性を求める上で、
個人ギルドの作成や加入は勿論だが、特定の個人と、
二人組のパーティーを固定することも珍しくない。
そんな関係を一般的には相方と呼ぶが、
自分にそんな相棒ができるとは思えない。
初心者学校のことを思えば、尚更である。
深々とため息を付いたポールに、
チハルは鼻を鳴らした。
「何、気の弱いこと言ってるんだお。
 天下の騎士様候補がそんなんじゃ、
 先が思いやられるお。」
総合点において、前衛職最強とも言われるナイトは、
パーティーを組みたがる相手も多い。
優遇職のくせに、何を気後れしているのかと言う。
「そんなこといったって、
 騎士って一口に言っても色々でしょ。」
「出来が悪いの、気にしてんの?
 そんなこと考えたってしょうがないお。
 他人にはなれないんだから。」
いうほど簡単じゃないと、頬を膨らませたポールに、
子供のくせにチハルは判ったようなことを言った。
「自分の欠点について考えるのは良いけど、
 それに捕らわれてたら駄目だってママが言ってるお。」
母親の影響なのか、どうもこの子は口が達者で気が強い。
如何にもクレイが言いそうなことを述べた側から、
チハルはあっさりと他のものに釣られ、話題を変えた。
「あっ! 見て見て! 
 あそこのお店、緑ハーブが1500zだって。
 ぼったくりだなあ!」
解毒に使う緑ハーブは、
せいぜい250z程度の価値しかない。
余所ならばまだしも、
ここジュノーカフェが管理する蚤の市で、
ぼったくりなど許せないと怒り、
係員を呼んでこようと言うのに、
指さされた薬草を見たポールは首を振った。
「違うよ。あれは緑ハーブじゃないよ。」
「え? そんなはずないお。」
どこからどう見ても、解毒に使う緑ハーブではないかと、
チハルは主張したが、店に近づくにつれ、
ポールには、その露店がぼったくりどころか、
非常に良心的であることが判った。
「これはアロエの葉だよ。
 これ一枚で白ポと同じぐらいの回復効果があるんだよ。
 軽くてかさばらないし、効果を考えれば、
 これくらいの値段は普通だよ。」
「えー アロエの葉って、もっとトゲトゲじゃないの?」
「これはもっといいやつ。
 沢山とれないから、これだけ量があるって珍しいよ。」
同じ名前の多肉植物が有名で、
薬用としても出回っているので混合されやすいが、
別の品種である。
ポールの居た緑豊かなフェイヨンでも、
滅多に見つからない高級品だ。
その高級品が、倉庫に四桁単位で眠っていると、
今朝がたマツリが言っていたのを思い出し、
若干顔をひきつらせながら、ポールは説明を続けた。
「よく見てよ。緑ハーブは裏側に白い毛が生えてるけど、
 これには無いでしょ?
 葉のギザギザも細かいし、サイズも一回り小さいよ。」
「ほんとだお。」
遠目からでは気がつかなかったと、
チハルが目を丸くし、ポールは改めて品物を見回した。
「それに他のハーブも定価だし、
 ここのお店は、すごく安いよ。」
「え? 定価なのに安いの?」
「うん。どれも一級品ばかりだもん。」
そう、この店の品物はどれも質が高い。
千晴はまだ小さいから、判らなくても仕方がないが、
比べてみれば一目瞭然だ。
「こっちの黄ハブは、よくある赤い斑点がないでしょ。
 白ハブも全体的に青みがかってる。
 日当たりだけじゃなく、栄養もたっぷりある土で、
 育たなきゃ、こうはならないよ。
 虫食いもないし、きちんと乾燥させてあるから、
 形もよければ、カビの心配もないね。」
これなら、普通の1.5倍ぐらいの効果が見込める。
この分なら、ポーションの質もきっといいだろう。
財布に余裕さえあれば、是非色々購入したいところだ。
けれども今日は目的が違う。
ため息をついたところで、店主が声をかけてきた。
「お兄さん、詳しいね。」
客を差別する気はないが、
違いを判って貰えると嬉しいと笑う。
「どうだい、少し買っていかないか?
 安くするよ。」
「あ、ごめんなさい、冷やかしなんです。」
まだ、目的の品が見つかっていないのに、
別のところでお金を使えない。
慌てて手を振って断るポールの下で、
ぽつりとチハルが呟いた。
「ボク、欲しいお。」
「えっ?」
「アロエの葉って奴。
 ボクのお小遣いじゃ、一枚しか買えないけど・・・」
「いいよ、一枚からで。」
驚いたポールの代わりに、店主が気さくに答えた。
ハーブは製薬してポーションにするにも、
そのまま使うにしても、一枚では効果が薄いため、
まとめ買いするのが基本だ。
たった一枚など用意するのも面倒だろうに、
快く引き受けてくれた店主に、ポールは頭を下げた。
「すみません、ありがとうございます。」
「いいよ、いいよ。
 確かにまとめ買いするには、高い品だしね。」
事も無げに店主は用意を始めたが、
やっぱり、ハーブ一枚だけというのは申し訳ない。
「えっと、じゃあ、そっちの赤ハブも、
 20枚ぐらい、一緒に貰えますか?」
「はいよ。全部で3000zにしとくね。」
赤ハーブなら、ピッキの餌に使える。
今日はフェイヤーに預けてお留守番のチビへのお土産に、
丁度いいとポールは財布をとりだしたが、
チハルは憤慨したようにお金をつきだしてきた。
「自分の分は、自分で払うお!」
「いいよ、これぐらい。」
多少、年長者の見栄もあって、
ポールはチハルは押し退けた。
1500zなら、ちょっといいお昼をおごったぐらいだ。
クレイには散々世話になっている。
昨日は夕飯代も浮いたことだし、
これぐらい、出せなくてどうする。

「あとでお金が足らなくて、
 装備が買えなくても知らないお?」
「だ、大丈夫だよ! 1500zぐらいじゃ変わらないよ!」
「1zを笑うものは、1zに泣くんだお。
 それに、ボクがママに叱られるお。
 おねだりしちゃいけないって。」
「じゃあ、黙っておけばいいよ。平気だって。」
勘定が終わって店を離れても、
チハルはブツブツ文句言っていたが、
それでも、アロエの葉を渡すと嬉しそうに笑い、
懐から出した小さいノートに、丁寧に挟み込んだ。
「一枚だけなんて、何に使うの?」
好奇心から訪ねると、恥ずかしそうに顔を綻ばせる。
「えへへ、薬草のノートを作るんだお。」
「ふうん? それなら本屋で買えばよくない?」
「自分で作るから勉強になるし、役に立つんだお。
 冒険者になるには、本を読んでるだけじゃ駄目だお。」
ハーブについてだけでなく、気がついたこと、
教えて貰ったことを一つ一つ纏めているのだと言う。
この子は流石にクレイの養子だ。
本当にしっかりしていると、
ポールはチハルを見直したのだが、
当人は何でもなさげに話を続けた。
「そんなことより、さっきの葉っぱの違い、
 他にもあるのかお?」
「え? そりゃ、ハーブだって、色々あるからね。」
メイルを探しながら、求められるが侭に答えていると、
露店の列が途切れ、少し開けた場所に出た。
結局、見つからなかったとため息をついたポールに、
チハルは偉そうに言った。
「まあ、そんなに気を落さないで。
 メイルぐらい、どうにでもなるお。」
「そうかなあ?」
確かに、今回は良い物が見つからなければ、
マツリが買ってくれることになっている。
だが、すべて先輩任せというのもどうなのか。
難しい顔で首を傾げたポールの背中、
を、本人は叩きたかったのだろうが、
如何んせん背が足らなくて、
お尻を思い切りチハルは叩いた。
「ならなかったら、どうにかするお!」
「あいたっ!」
思わず悲鳴を上げたポールに、
チハルはこれでもかと胸を張り、背を伸ばして言った。
「むしろ、ボクが何とかしてあげるお!
 だからボクと組んで、馬車馬のように働くといいお!」
「馬車馬は、イヤだよ!」
思わず言い返して、ポールは止まった。
「え、組むって?」
君、冒険者じゃないだろうとの質問を皆まで言わさず、
チハルは堂々と言い放った。
「ボクという、未来のハイウィザードと組めば、
 将来は安泰だお? 何の心配もしなくていいお!」
自信満々と言った体に、ポールは思わず吹き出した。
彼の魔術の才能や、将来的には兎も角としても、
いくら何でも気が早い。
「まだノービスでしょ?
 何より、そんな小さくっちゃ無理でしょ。」
「馬鹿にすんなお! ボクにかかれば、
 ウィザード試験なんて、ちょちょいのちょいだお!」
最初に受けるべきマジシャンは疎か、
ウィザード試験まで、意に介していないらしい。
鼻息荒く、三次職になると言い張るチハルに、
ポールは呆れるよりも、頼もしさを感じた。
自分が同じぐらいの時、
ここまではっきり騎士になると言えただろうか。
「まあ、気長に待ってるよ。」
「待つ必要なんか無いお。すぐだお、すぐ!
 だから、さっさと騎士になっておけお!」
「兎も角、まず、マジシャン試験に受かってからだね。
 それより、学校が先かな?」
プロンティアには就学義務がある。
家庭の事情や、個人の能力で、働きながら通うとしても、
12才までは児童学校に通わなければならない。
来年あたり、チハルも行くことになるはずだ。
さぞ楽しみだろうと思ったのだが、
怪訝な顔で返される。
「何、言ってるんだお。ボクはもう、2年生だお?」
「え? そうなの?!」
ポールは驚いて大きな声を上げた。
どう見ても、チハルは5才程度にしか見えない。
「じゃあ、もう7才なの?」
「来年の春には8才になるお。」
目の玉を飛びだたせんばかりに驚かれて、
チハルは深々とため息を付いた。
「知識も経験もなければ、お金も装備も、
 ハーブ以外の見る目もない。
 こうもナイナイ付くしじゃ、お世話が大変そうだお。」
「な、なんで、
 俺がお世話される側って決まってるのさ!」
どちらにしても10近く年下の子に下に見られ、
ポールは大きい声を出した。
流石にそこまで、言われるほどではないと思う、多分。

拍手[0回]

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
secret (チェックを入れると管理人だけが読む事ができるコメントになります。)
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
プロフィール
HN:
シプ
性別:
非公開
自己紹介:
適当6割、捏造3割。
残り1割に真実が混ざってないことも、
ないかもしれない。
取り合えず、閲覧は自己責任で。
オレンジリボン
子ども虐待防止「オレンジリボン運動」
最新コメント
[08/15 buiuuobcyx]
[08/15 hnwbgakpuo]
[08/14 fokfrfysmb]
[05/07 rzjcdujxck]
[09/17 JK]
アクセス解析
カウンター

Copyright © VN。 All Rights Reserved.
Material & Template by Inori  

忍者ブログ [PR]