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V(ヴァカみたいにどうでも良いこと)を、 N(ねちねち)と書いてみる。 根本的にヴァイオリンとは無関係です。
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ハイプリがいればかなり違う。
マツリの言葉は正しかったことは、
次の日、直ぐに証明された。
人数が増えたことも、勿論影響しているだろうが、
ドッペルゲンガーの出現数は、
前回と相変わらず激しいものであったのに、
同じ場所かと思わず思ってしまうほど、
ポールにも冷静に周囲を見渡す余裕があった。
やはり、ハイプリーストによる援護の有無は大きい。

ブレスや速度などの基礎支援は前回もあったが、
アスム、キリエなどの防御魔法たらぼのお陰で、
相手の攻撃を恐れずに済み、
SPの回復を促すマグニフィカートにより、
息切れすることなく、スキルが使いやすくなった。
新米剣士のポールが多少動きやすくなっても、
大した差はないかもしれないが、
熟練の騎士群となると、話は変わる。
当たりを気にせずスキル多用が可能となって、
前衛達の動きは激しく攻撃的になり、
そこにダメージを倍加するLAが入り、
せん滅力が一気に跳ね上がった。
攻撃力を底上げするイムポシウム、グロリアの影響も、
少なくないだろう。
テッカのボーリングバッシュ、
フェイヤーのブランディッシュスピアが、
ドッペルゲンガーの群を粉砕し、討ち漏らしたものは、
ノエルのピアースがとどめを刺し、
ジョーカーとマツリが残りをそつなく潰して回る。
メンバーが正に一つの群となって、
魔物の群を粉砕していく様に、ポールは目を見張ったが、
それを可能にしているユッシとクレイの存在にも驚いた。

正直、ハイプリーストが、
ここまで戦況に影響を与えるものだとは、
思っていなかったと言えばいい過ぎであるが、
二人の実力を侮っていたのは認めざるを得ない。
主に前衛と同じ位置で動いているユッシは、
絶妙なタイミングで防御魔法SW、ニューマを張り、
キリエとアスムを使い分けて、敵の猛攻を難なく防ぎ、
危険な位置に立っている自らは勿論、
仲間へのダメージを最小限に押さえているばかりか、
その最小限すらもヒールで直してしまう。
時には自ら的となって、敵の攻撃を防ぐ彼のやり方は、
攻撃を意識したヒゲはまだしも、
クレイに真似は出来まい。
では、クレイがユッシに劣るか。
後衛に回った彼女は基礎支援の維持に、
ユッシが届かない範囲への回復魔法やLAの追加など、
安全な場所から補助に徹していると表現すれば、
確かに安易な仕事しかしてないように思える。
だが、彼女が管理している補助魔法の数は、
決して少なくない。
バックルの魔応石に反応して一度に掛かる、
マニピやグロリアなどの全体魔法はまだいい。
だが、ブレスや速度増加などの複雑な単体魔法は、
一人ずつ、掛けていかなければならないし、
時間がたてば順に解けてしまう。
誰に何を掛け、それが何時切れるのかを把握するのが、
プリーストの仕事とは言え、メンバーは9人もいる。
それでも、この乱戦の中でユッシの補助をしながら、
全員の補助魔法を切らすことも、
掛け直しのためにメンバーの足を止めることもない。
管理力は勿論、
詠唱速度が他の比ではないクレイだからこそ、
可能であるのだろう。

時折、補助的にヒゲが支援に回ることもあるが、
ユッシもクレイも並のハイプリーストではない。
勉強の講師が終わると出かけてしまうユッシはまだしも、
クレイとは今まで何度も共に狩りに出かけたが、
ここまで高レベルのハイプリだとは、
ちっとも気がつかなかった。
それだけ、今まで手を抜いていた、
ひいては、手抜きが出来る、ぬるい狩り場にしか、
行っていなかったのだなと反省する。
ギルドを移ってから苦労したはずだ。
もっと頑張らねばと槍を持ち直し、
弱そうなのを狙ってつつく。

ジョーカーやマツリのように、
短時間で処理することは出来ないが、
アコライトや商人のドッペルなら、
何とか、対峙することぐらいは出来るようになっていた。
ポールのところにこぼれてくる魔物は、
既に少なからずダメージを受けていたし、
彼が戦っているのをみるや、
速度減少にスキル封じ、加えて毒等と、
周りから援護が飛んでくるのだから、
意地でも処理しないわけにはいかない。
SPは余りあり、怪我も負った側からヒールが掛かるのに、
戦わない理由は何処にもなかった。
なかなか当たらないのに、
歯を食いしばって攻撃を繰り返す。
フェイヤーの指示に従って、小部屋の一つを陣取り、
小休止に入ったときには、
ポールはくたくたになっていた。

床に座り込んだ彼を、息を切らしながらマツリがどつく。
「そんなところに座り込んでんじゃ、ありませんよ。」
横からノエルも口を出す。
「座ると、返って立てなくなるよ。」
「そんなこと、言われたって・・・」
膝が笑うのを止められない。
立ち上がれない新米に、山のようなヒールが降ってくる。
「ほれ、これで動けるだろ。」
「魔法の使いすぎは、後で反動が辛いよ、ユッシン。」
強制的に体力を回復させるハイプリーストを、
呆れ顔でフェイヤーが咎め、
テッカがスピードポーションを差し出した。
「飲んどけ、少しすっきりするから。」
「ありがとう、ございます。」
何とか立ち上がり、
受け取ったスピポをポールが一口飲み込むと、
横からジョーカーがそれを引ったくった。
「予想はしてたけど、激しいね、本当。」
いいながら、横取りしたのを飲み下す。
「ポール君のを取るなよな! これだからジョカは!」
当然、ヒゲがここぞとばかりに責めたてるが、
アサクロは黙ってスピポの瓶をつきだした。
「じゃあ、お前は飲まないんだな?」
「飲むに決まってるだろ!」
あっさり受け取り、牛乳でも飲み干すがごとく、
腰に手を当ててヒゲは薬瓶を口にしたが、
直ぐに怒りだした。
「空じゃねえかwwwwwwwwwwwww」
プンプン怒る相方に、
謝るどころかジョーカーはせせ笑った。
「全く、お前にだけはあれこれ言われたくないわw」
どうしても飲みたければ自分のを飲めと、
己こそを棚上げして、アサクロはクレイを振り返った。

「それより、クレイさんは大丈夫ですか?」
「ん?」
「病み上がりのリハビリにしては、
 ちょっと激しいんじゃないすか?」
確か、昨日大量に喀血したのではなかったか。
現場をみていないので何とも信じがたいが、
無理はしないのに越したことはない。
珍しく真面目に心配するジョーカーに、
クレイは肩をすくめた。
「いやあ、発作は今更だしねえ。
 それに今日はユッシンとヒゲ氏がいるから、
 相当楽です。」
どうということはないとあっさり言う彼女に、
ジョーカーは少し慌てた様子で無理をするなと止めた。
「いや、そんなこといったって、
 基礎支援全部やってるじゃん!
 この人数を管理するのは大変でしょ?」
「前衛を気にしなくてもいいし、
 掛け漏らしてもフォローが入るしなあ。
 なにより、人数が多いほど燃える。」
ちなみに過去最高同時支援数は12人ですと、
変わらない調子でVサインを作った彼女の後ろで、
フェイヤーが首を傾げる。
「あれも天津人特有のワーカーホリックの一巻かなあ?」
「よく言えば、逆境に強いタイプと言えるのかも。」
ノエルが力なく相づちを打つのを聞きながら、
ハイプリーストの特性じゃないといいなと、
ポールは思った。

そうこうしている間にも、
ちらほらとドッペルゲンガーの姿が見え隠れし始める。
「よし、じゃあ行くよ!」
フェイヤーの号令に、皆、武器を握りなおし、
再び進軍を開始しようとしたのを、マツリが止める。
「ちょいと、待っておくんなせえ。」
「なんだ、早くしろ。」
足を引っ張るような部下に、
テッカが苛立たしげに振り向くと、
ドドドドと音を立てて、マツリの袖口から鎖やら、
メイスの束やらがこぼれ落ちた。
「その前にこれ、誰か持ってくださせえ。」
重くて動けないと首を振る異色の剣士を、
上司は大声で怒鳴りつけた。
「本当に、お前はなにをやってんだ!」
「はいはい、回収回収。」
剣士たるもの敵を倒すことだけを考えろと、
マツリの襟首を掴んでテッカが怒る横で、
いつもの事とその他は落ちたアイテムを拾い集めた。

そんなことを何度繰り返しただろう。
いい加減、ヒールに応える体力もなくなったところで、
クレイがチッと舌打ちした。
「もう、限界かな。」
言うが早いか、ワープポータルを作成し、
ユッシに声を掛ける。
「ユッシン、もう、これ以上は無理。 帰ろう!」
呼ばれてハイプリは振り返ったものの、
直ぐに前衛への支援へ戻った。
「なんでだよ! まだ、そんな時間じゃないだろ!」
まだ消耗品も残っており、
自分も戦えるとユッシは言い放ったが、
クレイはさっさと左右に指示を出した。
「じゃあ、ヒゲ氏と二人で頑張って。
 ポール君、乗って。他の人も乗るなら乗って。」
直ぐにマツリが頷き、ポールの腕をつかむと、
魔法陣の中へ押しやった。
「え、まだ、俺も・・・」
皆が残っているのに、自分だけ戻るわけには行かないと、
躊躇するも、青白い光が体中を包み、
自動的に街へと運んでしまう。
あっという間に見慣れたアパートの部屋に戻っていて、
戸惑う暇もなく、
続けてやってきたマツリに蹴飛ばされた。
「移動点に立ち止まっちゃ駄目だって、
 言ってんでしょうが。」
「うわ、ごめんなさい!」
転がるように場所を空けるとジョーカーにノエル、
ヒゲにテッカの順に皆が現れ、
少し遅れて、ふてくされた顔のユッシに、
それを無理矢理押し込んだらしい、
フェイヤーを乗せたスピアリング号、
最後にクレイが戻ってくる。 

「ふむ、三時か。」
するりとペコペコから降りると、
時計を見上げてフェイヤーは一人頷いた。
「久しぶりに真剣に狩ったけど、結構きつかったね。
 ちょっと鈍ってたかなあ。」
「でも、続けられないほどじゃなかっただろ!」
憤懣やる勝たない様子でユッシが噛みつくのに、
クレイが呆れた顔をした。
「自分がやれても、他もやれるとは限らないでしょ。」
お前のことだと、
誰に言われた訳でもないにポールは顔を赤らめた。
きっと、クレイは新米の様子を見て、
帰ることを決めたに違いない。
その判断が正しかったことを証明するように、
戻ってきたことに安堵してしまった体は、
ピクリとも動きそうにない。
疲れすぎたせいか、気持ちが悪くて吐きそうだ。
まだまだ体力が足らないのだと恥じて、
膝を抱え込むように顔を伏せると、
ダンと、大きな音を立った。

顔を上げるとクレイが膝を突いている。
「少なくとも、うちはもう駄目だわ。」
そのままぐったりと動かなくなった彼女に、
慌ててマツリが飛んでいく。
「大丈夫ですか、姐さん!」
言われずとも腰の鞄から薬を引っ張りだし、
そっと手渡すのを受け取り、
震える手でクレイは薬を口に運んだ。
「うん、大丈夫。動けないだけ。」
本当は、もう1時間ほど前から帰りたかったんだよねと、
呟いた彼女に、無言でテッカが顔をしかめた。
その横で、ジョーカーも床に倒れ込む。
「だから、無理すんなって言ったじゃない。
 いや、むしろ、しないでくださいお願いします。」
ボクももう駄目だーとか細い声でアサクロが悲鳴を上げ、
ノエルも座り込んだまま、大きく息を吐いた。
「ずっとスピアに乗りっぱなしで、
 歩兵なんかやってなかったもんなあ。
 俺も鈍ってるよ。」
そうは言っても、
ポールやジョーカーより余裕がありそうだが、
自分に付き合ってペコペコを降りた彼に、
余計な負担をかけてしまったとポールは頭を下げた。

「なんか、すみません。俺がペコ乗れないせいで。」
「いやいや、騎士じゃない人はこれが普通だしね。」
純粋に俺が鈍ってるだけと、ノエルは笑って手を振った。
「ある意味、鍛え直すのに良い機会だよ。」
「だから言ってるだろ! もっと走り込みしろって!」
後ろから、ユッシが怒声を浴びせる。
しかも、彼自身はいつの間にか、
フェイヤーのロッキングチェアを、
ちゃっかり占領している。
「ユッシン、それ僕の椅子。」
当然、ギルマスから指摘されるが、
ハイプリは声だけ元気に反論した。
「いいじゃん、フェイさんは、
 ペコ乗りっぱだったんだから!
 うちは体だけじゃなく、
 気も使うし、頭も使うから大変なの!」
ゆっさゆっさと椅子を揺らしながら、
主張する彼には、誰も勝てないだろう。

「早めに帰ってきて、正解だったかね?」
のほほんとしたペースを崩さず、
ヒゲが振り疲れた腕を伸ばすと、マツリが肩を竦めた。
「Gvまでにへばっちゃ、意味がねえっすからな。」
まだまだ特訓が始まった初日だ。
いきなり飛ばしすぎることもなかろうと言い、
テッカもそれに賛同した。
「まだ、6日もあるんだ。
 さっさと荷物をまとめて、明日に備えろ。」
それに押されて、皆、座ったまま荷物を片づけ、
拾ったものを清算用の大袋にしまう。
「特訓が終わる頃には、どれくらいになるかなあ?」
ぼんやりと膨らんだ袋を眺め、
動けないまま呟いたポールを、
マツリが引っ張り起こしにやってきた。
「まあ、あんまり期待しないが吉ですな。」
MSでも拾えれば、多少は変わるがと言いつつ、
手を引っ張ってポールを立ち上がらせると、
椅子まで歩かせ、座らせる。
新米が片づくと、今度は床に転がったジョーカーと、
ノエルを蹴飛ばしはじめた。

「ほらほら、あんたらも、
 何時までそうしてる気ですかい。」
「ちょっとー 蹴飛ばさないでよ、マツリちゃん。」
「蹴らないで! むしろ踏んで!」
「ヒゲさん、うるさいよ。」
ブーブー文句を言いながら、
ジャガイモのようにジョーカー達が転がって逃げていく。
「よし、それじゃあ、今日はこれで解散!」
「お疲れさまでしたー」
フェイヤーの号令に揃って応え、
改めてポールは大きく息をついた。
「まだ、これで初日なのかー」
自分は最後までついていけるのだろうか。

「よし、ちょっと早いけど飯食いに行くかー」
「早すぎるでしょ。この時間じゃおやつだよ、おやつ。」
なんだかんだ言って、
先輩方はもう動けるようになっている。
それをみて、
ますますポールが自信をなくしているのを知らず、
ノエルとジョーカーが、
一息付きに、外へ何か食べにいこうと言いだし、
ヒゲとマツリ、クレイとテッカが頷いた。
「僕はうちで、留守番してるわー」
「ういっす。」
おじさんだから家で寝てると、フェイヤーだけが断り、
彼に留守を任せ、皆で出かけることにする。
「ほら、ポール君、立てる?」
「はーい。」
クレイに引っ張るように起こされ、
何とか立ち上がるも、二・三歩歩いて座り込む。
「あーもー 今日は本当に疲れました。」
この分だと、やっぱり役に立ちそうにないと、
口に出さずに落ち込んだ彼に、
頭から思いもかけない言葉が振ってくる。

「でも、ちゃんと動けてたじゃない。見直したよ。」
突然クレイに誉められて、ポールは目を見開いた。
「本当ですか!?」
「うん、ここまでよくなってるとは思わなかった。」
笑って頷くクレイに、
ジョーカーとヒゲも揃って賛同する。
「ボクも、びっくりしたよ。」
「頑張ったな、ポール君!」
しばらく離れていた先輩からの、
手放しの賛辞に疲れが一気に吹っ飛ぶ。
「いやっほう! 俺、ちゃんと動けてるぞ!」
嬉しさに任せて、部屋中を飛び回る。
あまりの変わりように呆れた顔をして、
クレイが騎士陣を責める。
「ちょっとあんた等、ちゃんと誉めてあげてた?」
いくらスパルタだからって、鞭だけじゃ駄目じゃん。
可哀想にと睨まれて、ノエルが心外そうに口元を歪め、
マツリとテッカが続く。
「誉めてたよ、俺は。」
「あたしも確か、誉めましたよ。」
「俺は頑張ってるとは言った。」
後半に行くほど怪しくなるのに眉をしかめ、
クレイはバシッとテッカの背をたたいた。
「これだから鉄は! 
 厳しいばかりじゃ駄目だって、わかってるでしょ!」
「うるせえなあ。すぐ、打つなよ。」
打たれても、力なく文句を返しただけで、
テッカは特別逆らわなかった。
それでも石が飛んでくる。
全て覚悟していたのか、大人しく当たり、
やれやれと首を振るテッカを切なそうに眺め、
ノエルが場を取り繕うように話を変える。

「それよりさ、何処行く?」
「ボク、ソックスがいいー 
 あそこ、ケーキが美味しいから。」 
ジョーカーが近所の喫茶店の名をあげ、
皆、異存無いと頷く。
「よし、じゃあ、いくけ!」
元気よく、ヒゲが号令をかけたのに従って、
皆が玄関へ向かうのを、後ろから引き留めた者がいた。
「ちょっと待ってよ。」
振り返ると、ふてくされた顔のユッシが、
ゆらゆらと椅子を揺らしている。
「何だよ、ユッシ?」
何故、一緒にこないのかと、
幼なじみが不思議そうに首を傾げるのに、
怒ったまま、ハイプリは手を差し出した。
「立てないから、起こしてくれ。」
疲れきっていたのは、彼も例外ではなかったらしい。

「なんだよもー だらしないなあ。
 お前こそ、走り込みやれよ!」
呆れかえった声をノエルが上げ、クレイが鼻を鳴らす。
「まだ狩れる、動けるって、
 誰か言ってませんでしたっけ?」
「誰でしたかねえ。」
「手前の余力を考えねえのは、三流だな。」
憮然とした顔でマツリが追従し、テッカも頷く。
その横で、ジョーカーが相方を責め、
ヒゲが腕を組んで反論する。
「よく見ろヒゲ、これが一般的な魔法職だ。
 お前みたいに体力馬鹿と違う。」
「失敬な。
 ワシは体力馬鹿じゃなくて、ただの馬鹿です!」
「どうでもいいですよ、そんなのー」
ぎゃいぎゃいと争う二人を、ポールが止める。

「良いから、早く起こしてよ!」
「はいはい。」
疲れきっても王様なユッシを、
肩を落としたノエルとクレイが引っ張り起こし、
今度こそ、皆で揃って出かけていく。
「いってきますー」
「はい、いってらっしゃい。」
騒ぎながら出ていくメンバーを見送って、
フェイヤーは嬉しげに目を細めた。
「本当、賑やかになってきたね。」
この分なら、次のGvも皆が何とかするだろう。
若いメンバーが元気に活動しているのを眺めるのは、
やはり、楽しい。
年寄り臭いと笑われそうな思いと共に、
大きく腕を伸ばす。
「さて、僕は先にゆっくりしようかな。」
寝る前に一杯飲もうかな等と言いながら、
お目付け役が居なくなったのをいいことに、
ふらふらと冷蔵庫に向かった彼の前に、
大きな影が立ちはだかる。
「クエッ。」
「・・・そういえば、まだ居たね、君も。」
飲む前に、する事があるだろうと言わんばかりの目で、
ペコペコがフェイヤーを見下ろしている。
スペアリング号の世話は、ノエルの仕事だが、
今日乗っていたのはフェイヤーだ。
「うん、わかった。
 今、小屋につれていってあげるから。」
「クエックエッ!」
「うん、餌と水も用意するから。」
頭上から、激しく催促されて、
よろよろとフェイヤーは手綱を引きながら、
ぽつりと呟く。
「もー せっかくゆっくりできると思ったのに。
 ノエル君、動物の世話はちゃんとしましょう。」
「クエックエッ!」
それを言うなら、まず自分が酒を飲まずに、
子供の面倒をちゃんとみなさい、お父さん。
ペコペコが口をきけたなら、そういったに違いない。

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