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V(ヴァカみたいにどうでも良いこと)を、 N(ねちねち)と書いてみる。 根本的にヴァイオリンとは無関係です。
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潮風の似合う町、
イズルートの街道を金色の髪をなびかせ、
楽しげに走っている少年がいた。
身を包んだ鎧は新しく、まだ馴染んでいない。
その腕にはキラキラと政府公認冒険者の証、
レンジャーバックルが光っている。
彼の名はポール・スミス。
この春、剣士になったばかりの新米冒険者だ。
向かう先は最近入会したギルドの溜まり場。
何せ、冒険者アカデミーを卒業してから、
ずっと一人だったのだ。
仲間が待っていると思うだけで、
自然と彼の足取りは弾んでいった。

周りが思わず微笑んでしまうくらい、
彼の足取りは明るいものだったが、
彼は彼なりに、急いでいたし焦ってもいた。
「遅くなっちゃった。クレイさん怒ってるかな?」
先日、彼をギルドに誘ってくれたハイプリーストに、
約束の時間は守るよう言われたばかりだ。
彼女曰く、
「一人前の冒険者というより、
 社会人足るもの、時間は守らなければならない。」
とのことだそうだ。
約束の時間を守らないと、
他人に迷惑をかけるし、
依頼を受けたときの信用にも関わると、
至極尤もな意見なのだが、
その割りに、他の二人のギルドメンバーのルーズっぷりが、
結構なものなのが気になるところだ。
ひいては、「ああなりたくなかったら、自重しろ」
と、言うことらしい。
それでも、二人とも気の置けない仲間であることに変わりはなく、
今日は皆で新しい狩場に行く予定だった。

更にスピードを上げて大通りを曲がり、何時もの場所にたどり着くと、
一人の女冒険者が、けだるげに本を読んでいるのが見えた。
長い髪は白髪に近く、右目には眼帯。
その手元には、魔法を扱う者が好むスタッフと呼ばれる杖が無造作に転がっており、
レンジャーバックルには大いなる癒し手、
ハイプリーストの証である銀色の宝石が光っていた。
プリーストは、回復から戦闘能力の向上などの支援魔法を得意するだけでなく、
場合によっては魔法で闇に属する魔物を駆除し、
自ら武器を振るって前線に立つこともする、
パーティーに必須とされる職業の一つである。
職業にはポールのような剣士やアコライト、シーフなどの、
各技術の基礎スキルを扱う一次職、
基礎を発展させ、更に高度な術や技を扱い、
専門性を高めたプリーストやナイトなどの二次職があり、
更にその上に、技術の粋を極め、多くの経験をつみ、
豊富な知識を身につけたものしかなれないという三次職が存在する。
三次職になる為には、一生を捧げなければならないほど難しいといわれるが、
その一つであるハイプリーストの彼女も、
それまでに多くの困難を乗り越えてきたのだろう。
整ってはいるが、どこか人を寄せ付けない厳しさを含んだ顔立ちが、
歴戦の冒険者であることを感じさせていた。
「クレイさん御免なさい、遅くなりました。」
呼ばれて、ハイプリが顔を上げる。
彼女はキツそうな雰囲気と違い、割とおおらかで、
本当に怒ったりすることはあまりないのだが、
時間に対する注意は、自分が一人前になる為のアドバイスだったので、
早速、遅れてしまったことが気が引けた。
しかし、ハイプリは全く意に介した様子がなく、
「大丈夫、まだ5分ぐらいでしょ。
 身内で、そんなに細かく時間に囚われても仕方ないしねえ。」
と、前回と正反対のことを言った。
そのあたりは柔軟に行けということらしい。
状況にあわせて対応する能力も冒険者には必要だということだ。
「さて、じゃあ、そろそろ出かけますかね。」
そういうと、クレイはゆったりと腰を上げたが、
まだメンバーがそろっていない。
殴りと呼ばれる変わったスタイルだが気のいいハイプリと、
自称モテ男のアサシンクロスが来ていないのだ。
「ヒゲさんと、ジョカさんはどうしたんですか?」
何かあったのだろうかと、多少不安そうな新米の質問を受け、
自嘲気味に顔を少しゆがめてフッと笑い、
静かに先輩プリは答えた。
「あの二人なら、公然猥褻罪の被疑者として、
 朝早くに任意同行されたよ。」
「またですか。」

本来なら、またですかでは済まないのだが、
陽気なギルメンの困った癖による騒動は、
このギルドでは割と日常茶飯事だった。
「急いでいってもどうなるもんじゃないし、
 ポール君来たら、移動ついでに迎えに行こうかと思って。」
「なるほどー」
「じゃあ行こうか。」
と、歩き出した先輩の後を追いながら、
新米剣士はぼんやりと思った。
「このギルド、皆優しいし、居心地いけど、
 こういうのが多いのだけが困るなー
 でも、楽しいからいっか。」
新米剣士ポール・スミス15歳。
彼は、ギルメンはいればいいってモンじゃないって事に、
まだ気がついて、ない。

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