忍者ブログ
V(ヴァカみたいにどうでも良いこと)を、 N(ねちねち)と書いてみる。 根本的にヴァイオリンとは無関係です。
[179]  [180]  [181]  [182]  [183]  [184]  [185]  [187]  [188
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 

e2825d8c.jpg






































「何でそう、皆してボクに冷たいのさ!
 もっと優しくしてよ!」
「セクハラ帝王に優しくしても無意味だ。」
ジョーカーの切なる望みは、いつだって全力で叩き潰される。
知らない人からすれば容赦のない虐めに見えるが、
実際はただのじゃれあいで、
本気で叩かれているわけではない。
第一、ジョーカーには叩かれるだけの前歴があった。

何しろ、兎も角巨乳好きなのだ。
それだけならまだしも、
彼の挨拶は相手が身内だろうと初対面であろうと、
8割がた「( ゚∀゚)o彡゚ おっぱい! おっぱい!」であったし、
全ての若くて美人な女性は自分に気があると思っていて、
何かにつけて「揉ませろ。」だの、
「ボクなしじゃ生きられない体の癖に~」などと言い出す。
本気にしろ冗談にしろ、性質の悪いことこの上なかった。
唯一の救いは、知り合いの女性陣は彼の性格を良く心得ていて、
一切相手にしないということだった。
彼を知らない者が驚くのは、どうしようもない。
当然のごとく、クレイも少なからず被害にあっていたが、
他の分類に漏れず、完全に無視するか、
それ以上の毒舌でもって叩きのめすぐらいで、
全く意に関していないらしい。
「ベッキーは、よく平気でうちのギルドにいるよな!」
と、ヒゲが感想を述べるほど、環境は良くないのだけれども。

それでも、統率なく各自好き勝手に動いている割には、
仲は大変いいほうで、
特にポールが入ってからは、
何事も不慣れな彼を手伝う為に、全員で狩りに出かけることが多くなっている。
今日も、中級者向けのダンジョンに行く予定だったのだが、
一騒ぎ起こった所為で、予定の時間を大幅に過ぎてしまっていた。
「自分らのお陰で、余計な時間を食っちゃったじゃない。」
「溜まり場に来たのは早かったんだけどね、珍しく。」
クレイの苦情に、神妙にジョーカーが答える。
珍しくと付け加えるあたり、遅刻常連者の自覚はあるらしい。
「今朝方、ヒゲとエンジェ探しに行ってさ、
 その帰りに直接溜まり場来たから、8時半には居たんだよね。」

エンジェリング・通称エンジェは首都プロンティアと狩人の森フェイヨンの中間点にある、
半島・ポリン島に生息する翼の生えたポリンである。
可愛らしい見かけにそぐわず、大魔法を使ったり、
大量のポリンを召還したりとなかなか手ごわいのだが、
珍しいアイテムを落とすし、それ自体の強さはさほどでもないので、
よく狩られるレアモンスターである。
ただ、レアだけあってその数は少なく、見つけるのは難しい上に、
発見されると、すぐ冒険者に狩られてしまう。
対抗者のいない早朝に探しに行くのは、ひとつの手であった。
「それでいたの、エンジェは?」
「いやー見つからなかった。」
折角、朝早くに出掛けたのに無駄足になっちゃったよと、ジョーカーがため息をつく。
「それで、イズに戻ってミルク買って、
 それ飲みながら、約束の時間が来るの待ってたんだよね。」
約束の時間は9時だったから、わざわざ家に戻るまでも無い。
ヒゲとジョーカーは30分、溜まり場で時間をつぶすことにしたらしい。
「とはいえ、何かしてれば30分なんてあっという間だけどさー
 何にも無いと、退屈なんだよね。」

一息入れようと買ったミルクも、5分もあれば空になってしまう。
首都に行って、露店を見てまわるほどの時間は無く、
ただ座っていれば過ぎてしまうほどでもない。
ジョーカーとヒゲは時間をもてあましていた。
「暇だなー」
「だなー」
クレイなら、常に持ち歩いている文庫本でも読むだろうが、
彼らにそういう習慣は無かったし、
武器や狩場の話をして聞かせるポールもまだ来ておらず、
二人だけで、改めてする話題もない。
ただゆったりと時間が過ぎていく。
「暇だから、歌でも歌うかー」
そう言い出したヒゲを止める理由はジョーカーには無かった。
むしろ、いい暇つぶしになると考えた彼は、
「良いね、なに歌うよ?」
と、無邪気にヒゲに尋ねた。
「もちろんワシの十八番!」
「お前に得意な歌なんかあったっけ?」
「任せろ! エントリーNo.1・ヒゲ、歌います!
 曲名は『セーラー服を脱がさないで』!」

何十年も前に、東の国・天津で流行ったという曲を、
何故、ヒゲが知っているのかは定かではない。
しかし、彼がこの曲を気に入っているのは事実で、
時々、思い出したように歌い始める事がある。
そんな時、周りは彼を全力で止めなければならないのだが、
生憎、ジョーカーはそれを忘れていた。
「セェーラー服をー、チャッチャッチャ、チャーラララ、
 ぬーがーさーないで、チャッチャチャ、チャーラララ」
「何故、今それよwwwwwwww」
はるか昔のアイドルが踊ったという可愛らしい振り付けで、
身長180近い、いい体格の男が生真面目に踊るのだ。
ジョーカーならずとも、笑い転げるに違いない。
「イヤよ、ダーメーよ、我慢なさぁってー、チャーチャーチャチャッチャチャララ」
「何故、脱ぐwwwwwwwwwwwwwww」
ご丁寧に伴奏まで一緒に歌う相棒と空を舞った上着に、
腹を抱えながらもジョーカーは突っ込みを入れた。
それが、彼にできる精一杯のことだったが、
それでも、彼はやはり、相方を止めるべきだった。

「そんでさ、気がついたらヒゲが全裸で、
 警備員がスッ飛んで来るところだったんだよね。」
「上着一枚どころの騒ぎじゃないじゃない。」
どうやら、逃げ回りながら努力した結果、
捕まるまでに上着以外は全部着れたというのが真相らしい。
まともな人間なら、この時点でギルド脱会を考えてしかるべきだろう。
だが、クレイは軽く肩をすくめて言った。
「そんなこったろうと思った。
 ほら、もう10時になっちゃうよ。早く出発しよう。
 今日は青ハブ20枚は集めたいんだから。」
「今からでも頑張れば、お昼ご飯までに10枚はいけるんじゃね?」
まったく動じないギルメンと、まったく反省の色のないギルマス。
この冷静さはどこから来るのだろう。
「ボクが盗めばもっと早く集まるんじゃないかな?」
「どうかな? ジョカは不器用だからな。」
「自分、いつも面倒がって途中で盗むのやめるじゃない。」
「なに、この軽視wwwwwww一応シーフ系なんですけどwwwww」
何事も無かったかのように、じゃれあいを始めるメンバーを眺めながら、
「仲間っていいなあ。」
と、ポールは一人思った。
何があっても許しあい、全てを受け入れられる。
そんな中に自分が入っているのが嬉しかった。
「ほら、ポール君、行くよー」
「はーい」
今日の行き先はゲフェニアダンジョン。
呪われた魔術で動く死者や、悪夢の中を彷徨う夢魔が現れる危険な場所。
だが仲間と一緒なら、怖くないと彼は思った。
皆一緒なら、どこへでも行ける。
行きたくないのは、留置所の中ぐらいだ。

拍手[3回]

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
secret (チェックを入れると管理人だけが読む事ができるコメントになります。)
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
プロフィール
HN:
シプ
性別:
非公開
自己紹介:
適当6割、捏造3割。
残り1割に真実が混ざってないことも、
ないかもしれない。
取り合えず、閲覧は自己責任で。
オレンジリボン
子ども虐待防止「オレンジリボン運動」
最新コメント
[08/15 buiuuobcyx]
[08/15 hnwbgakpuo]
[08/14 fokfrfysmb]
[05/07 rzjcdujxck]
[09/17 JK]
アクセス解析
カウンター

Copyright © VN。 All Rights Reserved.
Material & Template by Inori  

忍者ブログ [PR]