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V(ヴァカみたいにどうでも良いこと)を、 N(ねちねち)と書いてみる。 根本的にヴァイオリンとは無関係です。
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鳥型モンスター・ペコペコ。
比較的人に慣れやすく、
粗食に耐え、丈夫で力も強いため、
農耕、運搬用の労働モンスターとして使われ、
幼いうちはペットとして飼われたりする、
人々に身近なモンスターで、
ナイトの正式騎乗獣として認定されている。

しかし、全てのペコペコが、
騎士の騎乗獣になれるわけではない。
むしろ、冒険者用のペコペコとなるのは難しい。
幼い頃から人を背に乗せるため鞍や、
身を守る防具の取り付けに慣れさせなければならないし、
魔法や他モンスターに怯えることなく主に従い、
行動できる冷静さも必要となるからだ。
普通は専門の訓練師が手間暇かけて仕立てあげ、
騎士ギルドが設けた試験を合格した特別なペコペコを、
ギルドに申請して、借り受ける。
「騎乗用のペコを雛から育てるなんて、
 大変すぎるし、聞いたことがないよ!」
そう、フェイヤーが叫んだとおり、
騎士本人が騎乗獣として、
ピッキと呼ばれる雛鳥時代から育てるなどあり得ないし、
仮に育てたとしても、素人が育てたペコペコでは、
ただ乗るだけなら兎も角、戦闘用として使えないだろう。
無茶苦茶にもほどがあった。
だが、ポールはそう思っていない。

「えー でも、ピッキがペコの雛なら、
 いつかはペコペコになるでしょ。
 俺、それまで待ちますよ。」
ペコはペコだろうと、世間知らずの無邪気さで笑う。
参ったなあと、フェイヤーは頭を抱え、
テッカは程なく戻ってきたユッシを頭から怒鳴った。
「新人に変なこと吹き込むなって、
 あれだけ言っただろうが!」
「しょうがないじゃん! 
 まさか本気にするとは思ってなかったんだから!」
言い返しはしたが、ユッシも不味いと思ったのだろう。
って言うか、そんなこと言ったっけ?
と、目を泳がせる。
色々細かい癖して、
自分の行動にはいい加減なハイプリから、
一緒に帰ってきたお目付け役代わりの幼なじみに、
テッカが視線を移すと、ノエルは両手をあわせて謝った。
「すみません・・・
 ちょっと飲んでて、判断力が鈍ってました。」
酔っぱらいの陽気さで、
それも面白いと思ってしまったらしい。
「全く、無責任なことしやがって。」
そんなことをさせるために、
新人を預けたわけではないとテッカはもう一度、
二人を叱った。

まだ今なら、
ペットショップに返してこいと言えなくもない時期だが、
購入先はどこの誰とも知れない商人の露店だったらしく、
戻しようがない。
何より、ポールがすっかり情を移してしまっているので、
大人しく言うことを聞かないだろう。
「どうするんだよ、ユッシ。」
弱り果ててたノエルが肘でつつくのに、
意を決したユッシは答えた。
「よし、わかった。
 うちが説得するから、任せとけ。」
何とかあきらめさせようと、
説得中のフェイヤーを押し退け、頭越しにポールを叱る。
「ピッキから、ペコに育てて乗るとか、
 本気で思ってるわけ?」
「でも、ユッシさんがそうしろって、
 言ったんじゃないですか?」
「昨日は昨日、今日は今日なの!」
言うことが違うと、きょとんとしているポールに、
恥じることなくユッシは堂々と言い切った。
「騎士用のペコは専門の訓練師がすごい苦労して育てて、
 それでも5羽に1羽ぐらいしか使えないんだよ。
 そんな訓練、君にできんの?
 まず、自分が一人前にならなきゃいけないってのに、
 ペコにかまってる暇なんかないでしょ!」
「だから、ピッキの時からいろんな場所や、
 魔物を見せて慣れさせるんですよね?
 そもそも、ピッキ1羽庇えないと剣士として駄目だ、
 PTメンバーを守る訓練に丁度いいって話じゃ、
 なかったんですか?」
「あー そう言う考え方もあるか。」
酔ってはいても理論派ハイプリ、
それらしい理由を新米に与えたようだ。
我ながら流石だなと自画自賛していると、
後ろから「違う違う!」と突っ込まれ、
自分の仕事を思い出す。

「けどさ、ピッキがどの位で、
 一人前のペコになるか知ってる?
 一年だよ、一年! 
 それまでペコに乗らないつもり?」
正確に言えば、1年で成鳥と同じ大きさになるだけで、
骨の強度や健康面を考えれば、もう一年は欲しい。
「育ちきる前に無理に乗れば、骨が歪んだり、
 成長が悪くなったりするしさ。
 絶対後々に響くよ。」
可愛いペコに辛い思いをさせるのかと責めたてれば、
ポールも困ったらしい。
「確かに転職しないわけにいかないですしね。」
仕方なさげに頷いた。
ようやく納得したかとメンバーは胸をなで下ろしたが、
続いた言葉に再び顔を青くする。
「それまで歩くしかないですねえ。」
「騎士なのに、歩く!?」
即座にユッシは怒声をあげた。
「ペコに乗らない騎士なんて、騎士じゃないよ!
 プチ強い剣士だよ!!」
これには、メンバーがそれぞれの思いと共に、
口端を歪めたが、ハイプリは止まらない。

「今でさえ、ノルしかペコ乗らないせいで、
 うちが迷惑してるの、よく知ってるだろ!
 機動範囲やスピードだけじゃない、
 火力だって落ちるし、持てる荷物も減るし、
 視点が下がるから見渡せる範囲も狭まるし、
 直接攻撃を受ける危険度は上がるし、
 自分で走り回らなきゃ行けないから持久力も落ちる。
 騎乗技術だって簡単じゃない!
 攻撃、防御、スキル使用、何をするにも、
 ペコに指示を出しながらやらなきゃいけないし、
 動き方だって一人の時と違う。
 出来るなら、今すぐだって訓練を始めたいってのに、
 大きくなるのを待ってる時間なんかないよ!!
 何より、うちのギルドは即戦力が欲しいって言うのに、
 なに暢気なこと、言ってるんだよ!!」
非常に現実的で、最後には机を叩いての熱弁だったが、
叩いたのは机だけに止まらず、
その上、新人剣士は気まずそうに「でも、」と言った。
「俺、元々次のGvまでってことになってますけど。」
「あーそっか。ならいいか。」

あっさり納得したユッシに、再び年長組が怒鳴る。
「よくない! そう言う問題じゃない!」
「新人さんに間違った知識を植え込んで、
 責任とらないとか無責任にも程があるでしょ!」
テッカとフェイヤーに同時に怒られても、
ユッシは悪びれない。
「いいじゃん別に。
 止めたし、本人は納得してるんだから。」
結局、このハイプリは自分さえ納得さえしていれば、
後はどうでいいのだろうか。
「何がいいんだよ!」
幼なじみのマイペースに耐えきれず、
ついにノエルも参戦し、部屋は騒然となる。
喧々囂々ともめ始めた先輩たちを前に、
一人、ポールは困って首を傾げた。
「そんなに自分のペコを育てるのって、
 おかしいのかなあ?」
「ピィ」
話しかけても、雛鳥から答えが返ってくるはずもなく。
やっぱり、新米剣士の将来は前途多難なままのようだ。

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