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V(ヴァカみたいにどうでも良いこと)を、 N(ねちねち)と書いてみる。 根本的にヴァイオリンとは無関係です。
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「何で、余計なこと喋っちゃったのよ。」
「初めはフェイヨンなのに、
 アチャじゃないのって聞かれて、
 騎士を目指してる、弓の才能ないしって、
 答えただけだったんですよ。
 でも、俺のこと知ってる隣村の奴がいて、
 大げさな騒ぎになっちゃって・・・」
「あーね。余計なことする奴っているよね。」
結局、ノエルお勧めのラーメン屋に行くことになり、
麺を啜るという初めての食べ方に四苦八苦しながら、
ことの発端をポールは話した。
「弓、そんなに酷かったわけ?」
隣村に知れ渡るほどなのかとノエルが聞いた。
「弓の腕って言うか、
 集中力向上がどうしても出来なかったんです。」
他はまだしも、
これが出来ないと話にならないとポールは言い、
横からハイプリからの突っ込みも入る。
「あー そりゃ、きっついわ。」
主に相づちを打っていたノエルより、
聞き流しているようにしかみえなかったユッシの方が、
状況を正確に察してくれたらしい。
ラーメンを啜りながら、
そりゃ、弓手は諦める方が正解だとハイプリは言った。
「そんなもんなの?」
別職のスキルなので今一つ解っていないノエルに、
ユッシが強く頷く。
「おう、集中力向上が使えないハンターなんか、
 ブレスが使えないプリみたいなもんだ。」
「プリでブレス使えなかったら、確かにきついよなー」
例えに、ポールも頷いているのを見て、
ノエルは納得した顔をし、
それにしてもとユッシが話を進める。
「実際、何で騎士なのよ。
 フェイヨンなら商人かシーフの方が、
 まだメジャーでしょ。」
良い悪いでなく、純粋に納得できないのだろう。
話の序でなので、そちらも説明する。

「ふーん。一撃で魔物の群をねえ。」
ラーメンと一緒に頼んだ餃子を頬張りながら、
同じLKとして興味深そうにノエルは首を傾げた。
「それぐらい強いLKなら、
 こっちでも、名前ぐらい聞いても良さそうだけどな。
 10年ぐらい前か。その頃俺ら、何してたっけ?」
「10年前なら俺らもまだ、10歳かそこらだろ。
 確かにその頃、
 フェイヨンが壊滅寸前までいったって話を聞いたな。
 うちはアコライト学校に通ってて、
 お前はマーケルさんに、
 稽古を付けてもらってた時期だ。」
学力の必要な魔法職だからなのか、
性格の違いなのか、曖昧なノエルの問いに、
ユッシはすぐに答えを出した。
「あーそっかー その頃かー
 師匠、今、何処で何してるのかなー」
当時を思い出したのか、
懐かしげに目を細めたノエルと反対に、
ユッシは不振そうに眉を潜めた。
「聞いてもよさそうと言えば、
 あの人こそ、何処の誰なんだろうな。
 フェイさんの知り合いだと思って、
 当時は気にしてなかったけど、
 あれだけの腕なら有名だったはずなのに、
 噂話一つ、拾えないんだよな。
 死んじゃったのかね?」
不満げに不穏なことを言う相方に、
当然ノエルが噛みつく。
「死んだとか縁起でもないこと言うなー!
 確かにさ、判んないことが多い人だったけど、
 フェイさんに聞けば、
 流石に何処の誰かぐらい判るだろ!」
仮にも人の師匠になんて言いぐさだと、
ノエルは怒ったが、ユッシはあくまで冷静だった。
「いや、フェイさんも判んないって言ってた。」
この答えは予想外だったらしい。
ノエルが箸の動きごと固まる。

「え、そうなの?」
「お前・・・何が師匠だよ。」
のんきな幼なじみに鼻を鳴らし、
ユッシは覚えているかと言った。
「ほら、あの頃フェイさん、
 偶に赤い長髪のWIZと組んでたじゃん。
 あの人の知り合いだったらしいぜ。」 
「赤い髪のWIZ?」
これには、ノエルより先にポールが反応した。
思い出の騎士の相方も、
流れるような赤髪の美しいWIZだった。
ポールが反応した理由を察し、ノエルが首を振る。
「いや、髪が赤いからって、
 同じWIZさんとは限んないよ。」
「赤のロングヘアーのWIZなんて、
 掃いて捨てるほどいるしな。」
ユッシもポールの早合点を笑った。
「でも、同じ人なら面白いのにな。
 あの人も、今どうしてるのかな?
 凄い美女だったんだよなー
 それこそ、フェイさんとどういう仲だったのか、
 今度、聞いてみるか。」
いいことを思いだしたとイタズラっぽく笑う。
凄い美女と聞いて、
自分の思い出のWIZはどうだっただろうかと、
ポールは首を傾げ、ノエルはますます目を細くした。
「本当、美人だったよなあー
 俺が今までみた中で、あれ以上はいないもんな。」
「そんなに、美人だったんですか?」
人生で一番と聞いて、ポールは目を丸くしたが、
ユッシが即座に否定した。
「ばっか、ユーリさんがいるだろ。」
「あ、そうか。忘れてた。」
他にもっと綺麗な人が居たらしい。

仮にも、元ギルメン、
しかもあんな美人を忘れる奴がいるかと睨まれ、 
ノエルは跋が悪げに首をすくめた。
「因みにユーリさんは、今どこだっけ?」
「ROCOCOだよ。アリアと一緒だ。」
色々と思うことがあるのか、
ますますユッシの眉間のしわが深くなる。
「アリアもだけど、ユーリさんがいてくれりゃ、
 防御面が相当強化できるのになー
 何とか、戻ってきて貰えないかな。」
メンバーの人数不足と職の偏りに、
相当苦労しているのか、声が苛立っている。
「難しいだろうなあ。
 元々、ユーリさんは、
 クーさんが居たから居たようなもんだし。
 それより、アリアちゃんとはどうなったんだよ。」
ノエルはノエルで心配する所があるらしく、
Gvよりそっちが問題だろと言ったが、
即座に「どうもなってないよ!」と怒鳴り返された。
「アリアはうちの顔見れば阿修羅打ち込んでくるし、
 クーさんはクーさんで何処行ったんだ、あの女タラシ!
 あの人が居りゃ、どんだけうちが楽になるか!
 お嬢もミッシェも、さっさと居なくなりやがって、
 なにがこれを機に武者修行だ、バカ野郎どもめ!」
「まあまあ、そう怒るなって。」
ダンッと、机を叩いたユッシを宥め、
付いていけていないポールに、
例の嫁さんと別のギルドに移った昔のギルメンだと、
ノエルが耳打ちする。

「昔って、RGHの頃ですか?
 プロンティアの鷹って呼ばれてた頃の?」
ケビンの言葉を思い出し、ポールが聞く。
「あー そんな呼ばれ方もしてたっけな。」
真っ直ぐ敵につっこんでいく姿が、
鷹みたいだって言われてたと、
答えたユッシの返事は、如何にもやる気がなかった。
一気に怒った分、一気に冷めてしまったらしい。
「フェイさんは、鷹じゃなくて大鴉(Raven)だっての。」
誰に言うようでもないボヤきに新米が再び反応する。
「レイブン?」
「故郷じゃ紅い鴉って意味の名前なんだって。」
ぐったりした幼なじみに代わってノエルが答えると、
今度はポールが難しい顔になった。
「紅い鴉・・・カラスはCrow・・・」
以前、思い出の騎士の話の聞いたクレイが教えてくれた。
WIZが呼んでいた騎士の名前、
”KARASU”とは彼女の故郷アマツで、
鴉(Crow)のことだいう。
これにはユッシとノエルも顔を見合わせる。

「そういえば、あの頃、
 フェイさんも髪、赤く染めてなかったっけ。」
「染めてた染めてた!
 しかも、ふらふらあちこち行ってた!」
「ちょっと何ですか、その偶然!」
忘れていたと青ざめたユッシが言えば、
ノエルはこくこくと何度も頷き、ポールも叫ぶ。
思わず三人とも腰を浮かしかけたが、
直ぐにポールが思い直した。
「でも・・・その頃なら、フェイさんだって、
 まだ、二十歳そこそこでしょ?
 俺、顔とか覚えてないし、
 会っても判らないかもしれないけど・・・
 そんなに若い人じゃなかったですよ。」
それこそ丁度、今のフェイヤーと、
同い年位だったと思うと言うと、二人は微妙な顔をした。
「あーそういえば、そうか。」
「でもなんか、なあ。」
納得いかなさそうな反応に、
不思議そうな顔をポールがすると、
ノエルが苦笑いをする。

「いや、俺ら、
 フェイさんとは7歳の頃からの付き合いなんだけど、
 ずっと一緒だったせいか、
 フェイさんが年をとったっていう感じが、
 全くしないんだよね。
 昔っから、今ぐらいだったような気がしてさ。」
そんなに長いのかと、素直にポールは感心したが、
続いたユッシの言葉には、目を見張った。
「それこそ親代わりになってくれて、
 食べたり、寝る場所をくれたばかりか、
 学校まで行かせてくれた。
 うちらからすれば、もう、立派な大人だったもんな。
 その分、うちらがガキだった所為も、
 あるんだろうけど。」
「え、それって、どういうことですか?」
何となく予想はついたが、
信じられなくて反射的に聞いてしまい、
ポールは直ぐに後悔する。
「俺らさ、アナベルツ皇国のべインスっていう、
 田舎町の出なんだけど、いわゆる戦災孤児なのよ。」
魔物に村を襲われ、孤児がでるのは珍しいことではない。
ノエルの答えは思った通りだったが、
幼い頃、体験した恐怖は、
やはり、あまり思い出したくないことなのだろう。
笑顔がぎこちない。
あわててポールは謝った。
「ご、ごめんなさい! 変なこと聞いちゃって!」
「いや、いいのよ別に。大したことじゃなし。」
今時、よくある話だとノエルは言ったが、
ユッシは考え深げな顔をした。

「実際、フェイさんに拾って貰えなかったら、
 どうなってたか、判んないよな。」
「どうなったもなにも、確実に死んでただろな。」
飢え死にか、病死か、魔物に襲われ喰われたか。
仮に生きていたとしても、ろくな生活はしていまいと、
ノエルの顔も暗くなる。
「いつか、この恩を返さなきゃって、
 思い続けてきたけど、まだ、何も返せてないよな。」
「そうだな。むしろ、迷惑かけてばっかりだ。」
せめて、Gvでもっと勝てれば、ギルドの株も上がり、
前ギルド解散時に落ちた名声を、
取り戻すことも出来るのにと、ユッシは嘆いた。
それをフェイヤーがどこまで喜ぶかは難しいところだが、
今のところ、思いつくことはこれくらいしかない。
「でも、いくら個人のレベルが高くても、
 少数且つ騎士だけじゃ無理がありすぎるんだよなー!」
「焦んなって。レーサーとしてでも、砦がとれるとか、
 うちの人数じゃ上等すぎるって。」
元々Gvは、
対魔物に関する防城戦の訓練として始まったものだ。
ただ、砦を獲得するだけでなく、
ある程度の防衛や攻撃が出来なければ、
本当の評価は得られない。
思い道理にならない苛立ちを露わにしたユッシを、
ノエルが押さえたが、彼だって同じ気持ちのはずだ。

今までの盛り上がりが嘘のように、
全員黙りこみ、すっかり場が冷えてしまった。
全く自分はよけいな発言が多いと反省しながら、
同じく冷めたスープをポールが突っついていると、
無理矢理ユッシが明るい声を出した。
「でも、そう考えると、俺ら、超ツイてるよな!
 死ぬところだったのに、生きてるし、
 ギルド解散して人数少なくなっても、砦とれてるし。」
「そうそう、むしろ、運良すぎるぐらいだろ。」
声にはわざとらしさが残ったが、ノエルも元気に応える。
「今だって、テツさんもいればマツリちゃんもいるし。
 これからだって、どうにかなるだろ!」
「なるなる! ポール君だってきてくれたし、
 これからどんどん良くなるって!」
どんよりした雰囲気は性に合わないのだろう。
多少強引ながらもハイプリが流れを変えると、
残りの二人もそれに併せた。

「よーし、うち、替え玉頼んじゃうもんね!
 後、ビール追加!」
「俺も俺も! あ、ポール君はどうする?」
「俺は、このギョーザって奴がもっと食べたいです!」
「よっしゃ、おじさんー! 
 替え玉二つにビール二本、餃子三皿追加ねー!!」
折角、美味しいものを食べにきたのだ。
楽しくやろうと二人が笑うのに頷き、
ポールは大急ぎで残りの餃子を口に突っ込んだ。
「でもこれ、初めて食べましたけど、
 本当に美味しいですね!」
不器用に二本の棒を見よう見まねで動かしながら、
嬉しそうに餃子を頬張る新米に、
店を紹介したノエルは自慢げに笑った。
「でしょー! 箸を使うのが、ちょっと難しいけど、
 なれると凄い便利だしさ!」
「別にフォークで喰ってもいいような気もするけどな。」
横からユッシがケチを付けるが、
それは聞かなかったことにする。

「この麺も、見たことなかったですけど、
 いったい何処の料理なんですか?」
無邪気に新米が聞くのに、
二人がちょっと顔を見合わせる。
「元々は、龍之城(ロンヤン)の料理だって、
 テツさんが言ってたけど。」
「でも、ここの店のはアマツ流にアレンジされてるから、
 全くの別物だって、フェイさんは言ってたぞ。」
「アマツ風ロンヤン料理ですか。」
さて、この場合、どちらの国の料理になるのだろうと、
ポールが首を傾げると、
更にユッシが混ぜっ返すようなことを言う。
「作ってる親父さんは、
 バリバリのプロンティアっ子なんだけどな。」

プロンティア人が作るアマツ風ロンヤン料理。
「なんか、わけ分かんないですね。」
肉のとも魚介とも言いづらい、白濁したスープの麺と、
小麦粉生地の肉包を見ながら、ポールが箸を止めると、
ユッシとノエルも頷いた。
「分かんないね。」
「うん、分かんないな。」
再び、沈黙が訪れる。

「でもまあ、何でもいいじゃん!」
「だよな! 美味しければ、何でもいいよな!」
「そうですよね!」
これ以上、暗くなってたまるかと、
ユッシが再び大声を出し、
ノエルとポールも一緒になって騒ぐ。
「美味ければ、どこの国の料理だっていい!」
「美味ければ、わけ分かんなくったっていい!」
「美味ければ、なんだっていい!」
「なんか失礼だな、君ら。」
三人揃って叫んだところで、
追加注文を持ってきた店主から突っ込みが入った。
「うちのラーメンは、
 ちゃんとアマツの料理人に伝授してもらった、
 こだわりの豚骨スープだぞ。」
厳選された材料を何時間も煮込んで作る、
手間暇かけた一品だと主張する店主に、
これも三人揃って頭を下げる。
「誠に、申し訳ありませんでした。」
「誠に、失礼いたしました。」
「誠に、考えが足りませんでした。」
何度も言われることだが、ポール、そしてその周りには、
余計なことを言う奴が多い。

幸い店主はさっぱりした人で、
深くとらずに、許してくれた。
それでも、大慌てで追加をかき込み、
逃げるように店を出る。
「あー 親父さん怒ってなくて良かったー
 もう、この店来れないかと思った。」
「なんでもいいは、流石にまずかったよポール君。」
「ごめんなさいー」
口々に言い合いながら、往来にでたときには、
日が暮れ始め、薄暗くなっていた。
「思ったより、随分遅くなっちゃったな。」
「何言ってるんだ、まだ7時だろ。」
ユッシはまだ騒ぎ足りないらしい。
帰ろうという素振りを見せたノエルを牽制し、
もう一軒、何処かいこうぜと言った。
「折角財布も別にあることだし、
 今度は向こうの店で、肉喰おうぜ。」
「でもなあ、あそこ確かに肉も美味いけど、
 どちらかと言えば飲み屋だろ。」
未成年を連れ回すようなのはどうかと、
ノエルは気乗りしない様子を見せる。
「それに、明日だって早いし、
 ポール君だって疲れてるだろ。
 早めに帰って寝た方がいいんじゃないか?」
そろそろ、Gvのことも考えなければいけない時期だ。
疲れて体調を崩し、不参加となってしまえば、
ポールがギルドを移った意味がなくなってしまう。
「あ、俺なら、大丈夫ですよ。」
気を使わないでほしいとポールは言ったが、
ユッシが口を尖らせながらも、納得してしまう。
「そうだな。
 Gvのルールや城の構図とかも、
 覚えてもらわないといけないし、今日は帰るか。」
つまらなさそうに、
ハイプリはポケットに手を突っ込んで歩きだし、
ポールたちも、その後を追う。

「でもまあ、十分食べたし、いいじゃない。」
「本当、おいしかったです。」
機嫌良く、往来を行きながら、
ノエルはうーんと延びをした。
「美味いものも食ったし、明日も頑張るぞー!」
多少、アルコールも入っているせいか、
元気よく宣言した彼に、ポールも続く。
「俺も、頑張って立派な騎士になるぞー!」
「よっしゃ、その意気だ!」
ノエルが笑い、ユッシも高らかに宣言する。
「うちは、頑張って次のGv、
 BFをぶちのめす策を練るぞー!」
「ええ?!」
これには二人とも吃驚した。
「ちょ、そんなこと、大声で言うなよ!」
「だって、あいつら生意気だったじゃん!」
「そうだけど、
 流石にあの人数を相手にするのは無理があるし、
 無駄な騒ぎ起こすなって、言われてるだろ!」
「そうですよ、ユッシさん。
 俺のことは気にしなくていいですから!」
「うちが、ムカつくじゃん!
 任しとけ。ギルド人数は少なくても、
 うちの人脈をなめんなこの野郎!!」
「もー! お前、酔ってるだろ!」
ぎゃいぎゃい騒ぎながら、
程なくたどり着いた十字路で帰り道が分かれ、
帰りの挨拶を交わす。
「じゃあ、そんなわけでまた明日ね。」
「はーい。」
今日は、ありがとうございましたと頭を下げて、
ポールがイズルートに戻ろうとしたときだった。

「あれ? マツリちゃん。」
ユッシたちの向かう方向から、
マツリがやってくるのが見えた。
大袋を担いでいるところを見ると、
狩りから戻ったばかりなのだろう。
「まだ、出かけるの?」
戦利品を裁くにしても、明日にすればいい。
家と反対方向に向かおうとしているマツリに、
何処へ行くのかとノエルは問い、
ユッシはユッシで、
勝手に売っちゃうなと文句を言う。
「空き瓶なら、うちが買い取るっていったじゃん。」
するとマツリは袋ごと戦利品をユッシに押しつけた。
「空き瓶なら159個入ってまさあ。
 45000z、後払いでいいっすよ。
 リンゴとべと液はおまけで。」
そう言って、そのまま立ち去ろうとする。
「ちょっと、どうしたのよ。」
出かけるにしても、
疲れきった様子を見咎め、ノエルが更に聞く。
「帰らないの?」
その問いに、嫌そうに口端を歪め、
「あたしゃ、今日は帰りませんから。
 若旦那にも、そう伝えてくだせえ。」
と、マツリは言った。
それに、ピンとくるものがあったらしい。
ユッシががっしりとポールの腕をつかむ。

「よし、やっぱり、うちらももう一軒行こう。」
「え、ちょっと、何でですか?」
驚いたポールの反対側の腕を、ノエルも押さえる。
「うん、若いんだし、もう一軒ぐらい、大丈夫だよね。」
二人の変貌を理解できず、ポールは叫んだ。
「ちょっと、一体なんだって言うんですかー!?」
「帰りたくない! 
 今帰ると、絶対フェイさんと会ったことを後悔する!」
「夜はまだ長い!
 何だったら、今日はポール君のところに、
 泊まったっていいぞ。
 いや、むしろ泊めてくれ!」
新米の疑問を更に増幅するようなことを叫びながら、
ユッシとノエルは来た道を戻った。
序でにマツリにも声をかけ、
適当な店にポールを引き吊り込む。
彼らの家で、今何が起こっているにしろ、
新米の体調や、明日の予定は疎か、
長年の恩すら吹き飛ばしかねないことであるのは、
間違いない。

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