忍者ブログ
V(ヴァカみたいにどうでも良いこと)を、 N(ねちねち)と書いてみる。 根本的にヴァイオリンとは無関係です。
[212]  [213]  [214]  [215]  [216]  [217]  [218]  [219]  [220]  [221]  [222
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 


 

「や、別にそういう意味じゃ、ないんです!」
「いいけどさ、別に。」
あわてて言い訳する新米を軽く流しながら、
また、何かあったなと、ノエルは思った。
「俺がいない間に、何の話してたんですか。」
「いやー ヴァン神族もアース神族も、
 ごっちゃで祭れそうな天津の人は独特だよねって。」
「ヴァン神族ー?」
返ってきたギルマスの答えに、
穏和な彼にしては珍しく、嫌そうな顔になった。
「なんだかしらないけど、止めときなよ。
 ヴァン神族なんか、いくら拝んでも御利益ないから。」
「そうなんですか?」
「そうそう、どうせ祈るなら、
 剣士らしく、トールかティールにしておきなよ。」
確かにナイトは鬼神トール、クルセなら戦神ティールを、
守護神とするのが普通だが、新米に目もくれず、
スピアリング号に入場ラベルが張り付ける、
ノエルの態度には険があった。
「フレイヤに祈るくらいなら、
 俺はロキに祈るよ。その方がまだマシだ。」
オーディンの義理の息子でありながら、
数々の悪行をまき散らし、凶悪な魔物を産み出して、
神々の終末を引き起こした邪神ロキだが、
少なくとも仕事はする。
そんなノエルの言葉に、ポールは戸惑った。
海神教には幾柱もの神がいる。
主神オーディンがいくら偉大であっても、
その脇を固める神々が、勝らずとも劣るわけではない。
自分たちには馴染みがないとはいえ、
フレイ・フレイヤ兄妹神も、
オーディンと衣食をともにする歴とした同盟神で、
いくら己が信仰していないからといって、
ノエルの態度は神に対して不届きすぎるのではないか。
そう思ったのはポールだけだった訳ではないようで、
マツリが反発した。
「そういう言い方はないんじゃねぇすか。」
いつだか、ポールに対してそうしたように、
強い意志を秘めた瞳でノエルを捉え、真っ直ぐに責める。
「仮にも人の神様に向かって、
 ケチ付ける権利や実力が、あんたにあるんすか。」
「そうですよ、ノエルさん。」
信仰は人それぞれだが、
己が大切にしている神様を悪く言われたら、
いい気持ちはしないに決まっている。
マツリに荷担する気はなかったが、
らしくない態度に、不安を覚えたポールが続く。
「一体、どうしちゃったんですか。」
「いや、そういうつもりじゃなかったんだけど。」
確かに言い過ぎたと思ったのか、ノエルが目をそらす。
「まあ確かに、たかが装飾品の為に、
 身を売るような女神は拝みたくないがな。」
女は見た目さえよければいいわけではないと、
テッカがノエルの側に付いた。
このままでは後輩が孤立すると踏んだのかもしれない。
「いやいや、あれは高価なものを手に入れるには、
 それ相応のリスクを支払わなきゃいけないっていう、
 例えの一環でしょ。」
神話の解釈には口を出したが、
フェイヤーもこれ以上のもめ事には賛成しなかった。
「そんな大した話をしてたわけじゃないし、
 喧嘩しないの。」
もうこの話は終わりにしようと、ギルマスは言ったが、
それで大人しくするマツリではない。
不快感も露わにビシッとノエルに指を突き刺すと、
公然と言い放った。
「仮にもローグの守護神に向かって、
 ”マシ”たあ、随分な言い方じゃねえすか。
 ロキに祈って、なにが悪いってんでさ!」
「ええ、そっち?!」
流れに併せて、庇うべきはヴァン神族だと思っていた、
新米とギルマスが、同時に突っ込む。
反面、付き合いが長いため、何となく予想がついたのか、
テッカは冷静だった。
「LKのお前が怒るな、祀。」
ロキを押さえるトールを信仰する立場でありながら、
悪神を庇う部下を、無表情に諫める。

「謝んなさい! 天下のトリックスターに謝んなさい!」
「すみません、俺が悪かったです。」
普段のどうでも良さそうな態度はどこへやら、
プンプン怒るマツリに、
毒気を抜かれたノエルが素直に謝った。
「はいはい、その辺で、やめましょうね。」
小学校の先生よろしく手を叩き、
フェイヤーが場を仕切り直す。
「なんにしたって、
 どの神様も滅多に手を貸してくれないし、
 それでも僕らにはやらなきゃいけないことがあるし。
 さ、準備はできたんだから、もう行くよ。」
「うぃっす。」
ギルマスに従って、LK達が立ち上がる。
ポールもその後に続きながら、
先輩達は長年冒険者をやっているだけあって、
複雑な他国の事情も心得ているなと考えた。
「やっぱり、皆さん流石LKというか、
 いろいろ詳しいんですね。」
「勉強しなさい。」
軽い気持ちの一言が、ギルメン全員のつっこみを受ける。

「これくらい、新聞読んでれば分かるでしょ?」
当然のようにノエルは言ったが、
そんな年寄り臭いものは取ってないと、
ポールは首を振った。
「新聞なんか、長老が読むものじゃないですか。」
少なくとも、滅多に人の訪れない山奥にある、
彼の村ではそうだった。
しかし、ノエルには思いも寄らない返事だったらしい。
詰まった彼に変わって、フェイヤーが別案を出す。
「じゃあ、せめてTVのニュースをみるとか。」
「そんな! 
 TVは一日1時間なのに、ニュースなんか見たら、
 何にも見られないじゃないですか!」
「どこの小学生だ。」
テッカまで、呆れた声を出したが、
ポールはどうどうと反論した。
「1時間以上のTVを見たら、
 目が潰れるのは常識じゃないですか!」

自信満々の新米にLK達はそろってため息をついた。
「そりゃまあ、視力が重要なハンターに、
 疲れ目は大敵だけどさ・・・」
「だから、フェイヨンの他排的教育は、
 問題あるって言われちゃうんだよ。」
「どっちにしても、勉強だな。」
これから、毎日夕食後に交代で一般常識を学ばせようと、
満場一致で決定してしまい、ポールは悲鳴を上げた。
「ちょ、そんな、確かに俺はちょっと田舎ものですけど、
 そんなにスパルタするほどでも!」
「本当にちょっとなら、
 新聞は長老専用だとか言ったりしません。」
ギルマスに、きっぱり言い切られ、
本当に口は災いの元だと、新米はよよよと泣き崩れた。
そこにマツリがとどめを刺す。
「その前に、生きて帰ってこれますかね。」
「そうだったぁ!」
ここまでくれば、涙も出ない。

「最初に教えるべきはなにかな。やっぱり地理かな。」
「ゲフェンやモロクの位置ぐらい、判ってるんだろうな。
 どこにどんな魔物が住んでるかも教えねぇと、
 騎士検定の筆記で困るぞ。」
「一般魔法の知識も教えた方が良さそうですよね。
 せめて、プリとWIZの魔法ぐらいは、
 どんな効果か知っとかないと、PTで困りますし。」
狩り場にはいる前から魂のぬけたような新米を引きずり、
LK達は研究所入り口へ向かった。
先輩方に引きずられながら、
ふと、ポールは崖の下の街を振り返る。
相変わらず、レッケンベルの本社は、
太陽の光を浴びて白く光り、
それを取り巻くように、無機質な民家が立ち並んでいた。
「淡泊に見えた町だけど、
 あの中にも、様々な人が住んで、
 いろんな思いを抱えているんですね。」
自然と口からこぼれた言葉は単調だったが、
思いは複雑だった。
先輩方の話を聞かなければ、
自分は暖かみを感じない変な町として、
さしたる興味も持たず、すぐ忘れてしまったに違いない。
だが、プロンティアと変わらず、
ここでも人は必死に生きているのだ。
そんな彼らを助け、守るために、
自分達、公式冒険者・レンジャーがいる。

「人の住むところは、どこでもそうだよ。」
新米の思うところを感じ取ったのか、
フェイヤーが静かにほほえんだ。
「確かに町をよくするのは、そこに住む人の仕事だし、
 僕らにはなにも出来ないかもしれない。
 でも、町や人々を、危険から守ることは出来るよね。」
さあ、レンジャーとしての仕事をしようと、
ギルマスは新米剣士を誘い、ポールは頷ずいた。
改めて、レンジャーバックルを手にしたときのような、
使命感と誇りを噛みしめる。
今度の狩りでは、
自分など、まともに戦えるとも思えないが、
両手・槍・騎乗中と、
様々なLKの戦いを間近で見られるのだ。
今は役には立たなくとも、
少しでも先輩方の技術を吸収して、
きっと立派な騎士になってやると、ポールは心に誓った。
腹が決まれば、ドッペルゲンガーなど怖くない。
新米剣士は意気揚々と、先輩の後に続いた。
このとき、彼は僅か5分で決意を撤回する羽目になると、
誰が予想できただろう。
結構、意外でもないかもしれない。

拍手[0回]

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
secret (チェックを入れると管理人だけが読む事ができるコメントになります。)
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
10 2025/11 12
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30
プロフィール
HN:
シプ
性別:
非公開
自己紹介:
適当6割、捏造3割。
残り1割に真実が混ざってないことも、
ないかもしれない。
取り合えず、閲覧は自己責任で。
オレンジリボン
子ども虐待防止「オレンジリボン運動」
最新コメント
[08/15 buiuuobcyx]
[08/15 hnwbgakpuo]
[08/14 fokfrfysmb]
[05/07 rzjcdujxck]
[09/17 JK]
アクセス解析
カウンター

Copyright © VN。 All Rights Reserved.
Material & Template by Inori  

忍者ブログ [PR]