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V(ヴァカみたいにどうでも良いこと)を、 N(ねちねち)と書いてみる。 根本的にヴァイオリンとは無関係です。
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シュバルツバルド共和国では、遙か昔、
人類が魔力を持たなかった時代に栄えたといわれる、
古き時代のを技術を未だに研究されている。
人と魔物を分かつ壁が壊れ、
科学が意義を成さなくなったときから、
新しい魔術や技能を優先したミッドガッツ王国とは違い、
魔法力だけに頼ることなく、
生活に科学を取り入れた、独自の文化を形成していた。

ルーンミッドガッツ王国では考えられないことだが、
治安を重視する共和国では、移動魔法が厳しく管理され、
ワープポータルの登録や、テレポートの使用が、
禁止されている地域が多く存在する。
同国のカプラに当たる株式会社ジョンダにも、
転送サービスの提供が制限されており、
それを補う物質的な移動手段として、
鉄道や自動車など古代の乗り物が、
改良開発を重ねながら利用されてたのが、
この国で、科学を再び研究する発端となったと言われる。
特殊な設備や器具を使用しなければ、
作成・整備できない工業製品は、
時代遅れ、非効率的と揶揄する声もあるが、
機械工学からなる古代の遺産を改造し、
MPを動力源として動く日常生活品や、
電気配線に魔応石を組み入れた、
多大な情報管理機能を持つ魔導コンピューター、
それを利用した、人の手に依らずとも、
組み込まれた術式道理に魔法陣を形成、管理する、
自動防御システムなどが開発されたのもこの国であり、
今や、人々の生活に無くてはならない技術も多い。
また、国土の大半が山岳地帯のため、
整地の不十分な陸路よりも、空路が発展したのだが、
巨大な風船で空を移動する飛行船の開発や、
その一般開放を可能にしたのも、
高い科学的技術であった。
市民の足として、今や飛行船は共和国中を飛び回り、
近年では、友好関係の象徴として、
イズルートにも空港設備と飛行航路が設置された。
生体研究所のあるリヒタルゼンへ向かうにも、
この飛行船に乗るのが、
もっとも全般的な移動手段になる。
乗り換え地点であり、
隣国の首都でもある、学術都市ジュノーへは、
国境都市アルデバランから北へ徒歩で進むか、
カプラの移動サービスを使うこともできるが、
そこから先は、どのみち飛行船に乗らなければならない。
多少時間はかかるが割安な移動手段として、
輸出入品の運搬や、
旅行者の移動手段などに活用されている。

今でこそ、落ち着いてはいるが、
輸送手段と言えば、ペコペコによる馬車ならぬ鳥車、
もしくは、漁業・輸送・移動用と大小の違いはあれど、
船位のミットガッツに、初めて飛行船が舞い降りた際は、
当然、国中をあげての大騒ぎとなり、
溢れんばかりの人が集まったそうだ。
イズルートに住み、
日常の一部として馴れてしまったとはいえ、
プロペラ音を立てながら、
上空から舞い降りてくる飛行船を目にするたびに、
ポールも、未だ激しい高揚感に身を包まれる。
「いつかは、乗ってみたいと思ってたんですよね。」
新しいブーツの紐を締めなおしながら、
ポールは言った。
「確かに、用事がないと乗らないからね。」
運賃は高いものでもないけれどと答えながら、
フェイヤーがポールに槍を渡す。
「貸してあげるから、こっちも使いなさい。
 火属性だけだと辛いから。」
「はーい。」
手渡された槍を振り回してみる。
ポールは知らなかったが、騎士垂涎の品、
+10人型特化パイクであった。
「実際、飛行船はすごいよねー
 あんなもの、よく創ったと思うよ。」
借り物の槍が軽くて使いやすそうだと、
ご機嫌な新米に、横からノエルが薬瓶を投げつける。
「それも持っておきな。
 あそこは毒とか沈黙とか、
 嫌らしい攻撃してくるやつ多いから。」
「何ですか、これ。」
「万能薬。大概の状態異常はそれで直るよ。」
「へー」
毒消しと言えば、緑ポーションしか知らないポールは、
黒い丸薬が入った小瓶をしげしげと眺め、
ありがたく、腰のポーチにしまい込んだ。
そこに、マツリからも所持品の確認が入る。
「蝶の羽と白ポもちゃんと持ってんでしょうな。」
ポール愛用の赤ポーションでは、
大けがを負ったとき、回復が間に合わない。
それに、一瞬の判断ミスが死を招く、
上級者でも危険な狩り場に赴くのだ。
万一、仲間とはぐれたら、
ポールの腕では生還できない。
すぐにでも、蝶の羽でセーブポイントまで戻るのが、
もっとも簡易で安全である。
いつも通り、あわてて確認するポールを、
あきれ顔で眺めながらも、
飛行船はいいと、マツリはつぶやいた。
「なんたって、空からの眺めは格別ですぜ。
 風が強いのが難点ですが、
 船内に入っちまえば、関係ねえし。
 黙ってても目的地まで、
 勝手に運んでくれるから、楽でいいっすな。」
「ほえー」
子供の頃、村で一番高い杉の木に登ったことがあったが、
それよりも高いのだろうか。
目をパチクリさせたポールを、テッカが急かした。
「お喋りはその辺にしとけ。
 準備はもう、できたんだろうな?」
「はーい!」
「僕は大丈夫。」
「準備ができてなきゃ、こんな気ぃ抜いてませんわ。」
「まって、今、スピアを連れてくるから!」
出発直前の慌ただしさが、改めてたまり場を包み、
それが消える頃には、ペコペコ含む全員が、
危地に赴く冒険者としての準備と覚悟をすませていた。

「よし、じゃあ行くか。」
テッカの号令で全員が立ち上がり、
マツリがブルージェムストーンを、
魔力を込めて投げつける。
「ワープポータル。」
シュワシュワと水が吹き出るような音を立てて、
魔法陣が出現した。
「さあ、乗って乗ってー」
促すフェイヤーに、ポールは叫んだ。
「飛行船に乗るんじゃないんですか?!」
「うん。マツリちゃんがもってるから、
 ポタで行くよ?」
何を今更とギルマスが不思議そうに小首を傾げた後ろで、
LKたちも当然のように言う。
「結局、移動はこれが一番早いからね。」
「制限はされてますが、全てが使用不可なわけじゃ、
 ありませんかんな。」
「クエックエッ。」
これだけ引っ張っておいて、ポタはなくない?
納得のいかない流れに、ポールが愕然としていると、
テッカに怒鳴られた。
「飛行船なんかでいったら、
 着くまでに何時間かかると思ってるんだ。」
さっさと乗れと、突き飛ばされるようにして、
ポールは、ワープポータルに押し込まれた。
LKたちもその後に続く。
どう頑張っても、タイムラグ的に飛行船はないのである。
魔法が便利なのは、こう言うところにあると思う。

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