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V(ヴァカみたいにどうでも良いこと)を、 N(ねちねち)と書いてみる。 根本的にヴァイオリンとは無関係です。
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潮風の似合う町、イズルート。
どこからか聞こえてくる漣にあわせ、
海鳥が歌っている。
そろそろ、梅雨が始まってもおかしくないというのに、
空は爽やかに晴れ、そよ風が心地よい。
飛行船の整備や、船旅の手配、
漁の支度と、人々が仕事に勤しんでいる中、
ポールは人気のない公園で素振りをしていた。
剣士ギルドで習った型を繰り返しながら、
昨日の会話を反芻する。

「Gvに出たいとか、いわないでよ?」
中継の興奮がある程度冷めたにも拘らず、
言葉少ないポールに、
珍しく、その意を察したジョーカーは言った。
「公式G登録は済ませてあるから、
 参加だけなら出来なくもないけど、
 現場に行ったからって、
 追い返されるのが関の山で、何も出来ないかんね。」
まして、一次職なんて、
見学すら難しいと、片手でAXがあしらうのを、
HPも支持する。
「前半なら、人がいないところを狙って、
 エンペ割る位ならできるだろうけど、
 それなら、中継見てた方が何ぼかマシだしなぁ。」
「余計なこと考えないで、
 今はまず、二次職を目指すのが先だって。」
クレイさんだってそう言うよと、
ジョーカーは後輩を窘めたが、
ポールは返事をしない。
後輩が納得していないのを悟り、
更にジョーカーは何か言おうとしたが、
ちょうど説教役が帰ってきたので、
バトンタッチした。
「ちょっとー 
 クレイさんも何とか言ってやってくださいよー」
お帰りの挨拶もそこそこに、
ジョーカーが文句を言うのを、
「んー?」
と、やる気のない返事でクレイが受ける。
そして、大体の事情を把握すると、あっさりと言った。
「それなら、
 Gvやってるギルドに入ればいいんじゃないかな。」
他のギルドに入るということ、
つまりはドスコイを出て行けという提案に、
よく分かってないポールを差し置いて、ヒゲが慌てる。
「ちょwwwまwwwwww
 そんな、急にギルドを変えるっても、
 簡単には出来ないだろwwww」
「慌てるな、ヒゲ氏。 
 世の中には体験という制度がある。」
あくまで冷静に話をするクレイが、
言わんとしていることを理解し、
ヒゲはすぐに落ち着きを取り戻したが、
それでも首をひねった。
「しかし、その手があるとしても、どこに入るべきか、
 特にGvに出たいとなると難しいなあ。
 せめて転職ぐらいしてれば、良いんだが。」
相変わらず、自分のことなのに、
何の話をしているのか理解できず、
ポールがジョーカーを振りかえる。

「体験って言うのは、
 期間限定でギルドに入ることだよ。」
そう、AXは説明してくれた。
短くて一週間、長くて一ヶ月ほどと期間を定め、
その間に、
ギルドが自分に合うかを判断するのだ。
よければ、そのまま正式所属となるし、
何かあればお世話になりましたと、立ち去るものらしい。
この体験制度を使えば、期間を終えた後、
波風を立てずに、ドスコイに戻ってくることが出来る。
「でも、Gに入るだけなら未だしも、
 Gv参加となるとねえ。」
Gvに出るならば、それなりの実力がなければならない。
正式所属が確定しているのなら、
一緒に狩りに行ったり、
転職試験を手伝うなりしなくもないが、
何時抜けてしまうか判らない体験では、
手間をかけての協力はしないだろう。
さりとて1次職のまま参加しても、
戦力どころか足手まといにしかならない。
あえてポールを受け入れるところがあるとは思えないと、
ジョーカーは肩をすくめた。

「ブラッドさんのところとか、
 事情を話して入れてもらえないかな?」
「いや、あそこは結構シビアだし、無理だろう。」
「ちっ、使えねーな、あの野郎。」
本人を置いてきぼりにしたまま、
策を練るクレイの台詞が、何時もより、
三割り増し程度黒い気がする。
気が乗らないのか、
聞き取れない程度にブツブツつぶやいていたが、
やがて観念したように、結論を出した。
「すると、後、
 頼めるのは祀ちゃんのとこぐらいかね。」
言ってから、ため息をつくところを見ると、
何か、嫌なことでもあるのだろう。
それを肯定するように、
ヒゲが心配する。
「それって、色々と大丈夫なの? ベッキー的に。」
「知らん。なるようになれば良いと思います。」
「投げやりwwwwwww」
何が大丈夫じゃないのか、ジョーカーとポールには、
さっぱり見当がつかなかったが、
ハイプリ二人は、これで話が決まったと判断したらしい。
「行きたいなら、自分で頼みなよ。」
そうまとめると、帰り支度を始めだした。
「俺、まだ何も言ってないんですけど。」
完全に置いてけぼりにされたポールは、
一応反論はしてみたが、
「ハイハイ。」と、軽くあしらわれてしまう。
何より、Gvに出てみたいと思っていたのは、
事実だった。
「そんなに、面白いもんじゃないと思うよ。」
そう、AXも首をすくめると、
後片づけを手伝い始めたので、
その日は半ば強制的に解散となり、
各自家路を辿ることになった。

それから、一晩がたっても、
ポールはすっきりしない気分を抱えていた。
狩りの予定は午後からだったから、
また、剣士ギルドで勉強でもしようかとも考えた。
だが、大人しく机に座り、本を広げても、
余計なことを考えそうで、
公園で体を動かすことにしたのだ。
しかし、身が入らない。
「俺って、やっぱり、考えが甘いのかなあ?」
口に出さずに自問してみる。
確かに、世間知らずの怖いもの知らずではあるようだ。
敵の強さや、動きの重要性を考えずに話をして、
よく、ジョーカーに笑われ、クレイに窘められる。
そもそも、二次職はおろか、
三次職ですら、大変だと言われるGvに、
一次職の自分が参加するなど、
言われるまでもなく、無謀だとわかっていた。
それでも、テレビの中でとはいえ、
目の前で繰り広げられた激戦に、
自分も参加してみたいという思いが消えない。
頭では理解しても、心が納得しないのだ。
この先を望みすぎる性格が、時々、
「我慢することも覚えなきゃ。」
などと言われる所以なのだろうか。
後先考えずに、あれこれやりたがり、
怒られたことも記憶に新しい。

大体、Gvはレベルが高くても、
全く関わらない冒険者も多い。
国防に関わる為、軽んじることは出来ないが、
冒険者の活動としては、オプションのようなもので、
必須ではない。
参加するにしても、慌てず訓練を積んで、
まずは騎士になり、
それから考えても遅くはないことだ。
Gvだけにとどまらず、
装備や、冒険者としての知識や経験を早く積んで、
一人前になりたいと言う気持ちが強すぎ、
空回りしている。
いったい、自分は何を焦っているのだろう。
原因不明の焦りは、行動にも影響しているようで、
狩り場でも、先走り、進みすぎて、
大量のタゲをとってしまう。
しばしば、ヒゲやジョーカーに注意されるが、
未だに直らない。
前に出ることだけが剣士の仕事ではないことは、
もう理解しているのだが。

強くなりたい。
TVで見た冒険者達のように、
激戦でも怯むことなく、剣を振るえるような騎士に。
しかし、誇れるほどの努力や経験は、まだなく、
学んだ事すら、動きに反映されていない。
それで強くなりたい、誰かと肩を並べたいなど、
虫が良すぎるではないか。
「それが判ってるのに
 Gv出たいとか思っちゃうあたりが、
 甘いってことなんだよな。」
考えるまでもなく、出ていた答えに、自らあきれ、
ポールは再び槍を振り上げた。
まずは精進あるのみである。

「せいが出ますな。」
突然、後ろから声をかけられ、振り返る。
二人連れの冒険者が手を振っていた。
片方はマツリだ。
「マツリさん!」
予期せぬ友人の来訪にうれしくなったポールは、
あわてて槍をしまうと、駆け寄った。
「昨日のGv見ましたよ! 凄かったです。
 何であんなに避けられるんですか?」
「剣士として、目が行くんがそこって言うのは、
 どうなんでしょうかねぇ。」
剣士の回避が高くてはいけないと言うことはないが、
攻撃を避けるのが得意なのは、本来シーフ系である。
他に見るべきところがあったのではないかと、
言いたげなマツリを、連れのチェイサーが宥めた。
「いいんじゃないの。
 知り合いが出てたら、そっちに目が行くし。
 お前が一番目立つのは、確かにその回避力だからな。」
下手をすると、本職のオレらより避けると、
チェイサーは肩をすくめる。
その銀髪には見覚えがあった。
「あなたは、確か、ジュノーカフェのカメラマンさん?」
「そうそう、っていうか、前にも会ったでしょ。
 姐さんが過労で倒れたとき、連絡に行ったじゃん。」
「ああ、そういえば!」
言われてすぐに、ポールは思いだした。
ヒゲの借金騒動で、クレイが体調を崩し、
次の日の狩りに行けなくなった際、
不参加を伝えにきたのは、
確かにこのチェイサーだった。
アサシンと対をなしながら、仲の悪い、
ローグの上級職が連絡にたったため、
ジョーカーが必要以上に文句を言っていたのも、
記憶に残っている。

「あの時は、わざわざありがとうございました。」
ポール・スミスですと、自己紹介しながら、
右手を差し出すと、
チェイサーも、レオ・シャッファーだと、
握り返してきた。
「今日はいったい、どうしたんですか?
 クレイさんに何か用事でも?」
「いや、あたしゃ、
 この人に付いてきただけなんすけどね。」
「俺はちょっと、ギルメンに用事頼まれてさ。
 手紙を届けなきゃいけないんだけど。」
”ヒューゴ・バルバロッサ”という人物を、
知らないかと問われ、ポールは首を傾げた。
「この辺りに、住んでるはず何だけどな。」
イズルートは狭いから、すぐ見つかると思ったらしい。
見当がはずれ、レオは困ったように辺りを見回す。
「俺よりジョカさん達の方が、
 もっと、よく判ると思いますよ。」
いくらイズルートの人口が少ないといっても、
ポールは住み初めて、わずか二ヶ月足らずだ。
反面、ヒゲやジョーカーは住み着いて長い。
きっと判るはずだと、三人はたまり場へ向かった。

狩りの予定が午後からでも、
きっといるはずだと踏んだ、
ポールの予測は間違っておらず、
たまり場には、ジョーカー、ヒゲ、
それにクレイまでが、顔をそろえていた。
挨拶が住むと、早速ポールはレオの用件を切り出した。
「ヒューゴ・バルバロッサって人を、
 訪ねてきたそうなんですけど、
 ヒゲさんかジョカさん、知りませんか?」
自分は心当たりがなくてと、
ポールが付け加える暇もなく、
ヒゲがあっさりとうなずく。
「ああ、それワシだわ。」
「は?」
言っている意味がよくわからなくて、
ポールが聞き返す。
「だから、ワシの本名だって。」
「なんすか、その意外すぎるマトモな名前は。」
まさか、”ヒゲ”が実名だとは思っていなかったが、
突然判明した事実に、ポールは返す言葉を失い、
代わりにマツリが突っ込む。
クレイを振り返ると、
いつかこうなることを予測していたらしく、
ため息混じりに答えた。
「ちゃんとはじめに紹介したよ。
 彼はヒゲこと、ヒュー・・・」
「ヒゲでーすwwwwよろしくねっミ☆wwwwww」
クレイが言い終わる前に、ヒゲが口を挟み、
肝心なところをかき消された残りがむなしく響く。
「・・・ですって。」
「あー なるほどね。」
だいたいのところを察したマツリが、
無表情に相づちを打った。

「人に会わせる度にこれだから、
 ボクもまともに紹介できたことがないよ。」
呆れたように、ジョーカーも首をすくめたが、
すかさずヒゲが反撃する。
「ジョーカーにwwwwww
 友達紹介されたことなんてwwww
 一度もないんですがwwwwwww」
「黙れwwwwwどうせ、ボクは友達少ないよwwww」
お客の前だというのに、
二人はボコボコと殴り合いを始めた。
子供っぽいこと、この上ない。
「まあ、これを気に、
 ヒゲ氏は自己紹介ぐらい、
 ちゃんとするようにしてください。」
「ふぁーい。」
半ば諦めたようにクレイが注意したが、
ヒゲは至極やる気のない返事しかしない。
これからも、似たようなことが起こりそうだと、
ポールは思った。

ヒゲの返事に不安を感じたのは彼だけではないようで、
マツリとレオもクレイを支持する。
「最初の挨拶ぐれぇ、ちゃんとしておいた方が、
 後々、面倒が少ねえと思いますがね。」
「名前がわからないと物も届けられないし。
 そういうのは、はっきりさせておいた方が良いよ。」
周りが困ると二人は言い、
ジョーカーがうんうんとうなずく。
「まったくだよ!」
一緒にいるボクの苦労も考えてほしいと、
AXは主張し、ふと思い出す。
「ところで、皆、ボクの名前は知ってるよね?」
すぐにYesと答えが戻ってきて、当然のところだが、
誰もジョーカーを見ていない。
「何で、ヒューゴでヒゲなんですか?」
「それはメソ・・・」
「ベッキー、シーッ!!」
「ああ、御免御免。」
質問を無視して、ヒゲのあだ名で揉めるギルメンに、
ジョーカーは無表情につっこんだ。
「華麗にスルーしないでくんない。」
お客がいても、いなくても、
ジョーカーの扱いは常にひどい。

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