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V(ヴァカみたいにどうでも良いこと)を、 N(ねちねち)と書いてみる。 根本的にヴァイオリンとは無関係です。
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騎士団での狩りの後も、マツリはしばしば溜まり場に立ち寄るようになり、
一緒に狩りに行くことも増えた。
同時にクレイが狩りに参加しないことも増えたが、
本来の所属先であるGと連絡が付き、
そちらに呼ばれるようになったらしい。、
何処で何をしているのか、さっぱりわからなくなったが、
そもそも、彼女は入院中にギルメンと連絡が付かなくなったからと、
ドスコイに仮所属していた身だったので、
問題が解決した以上、仕方のないこととして、黙認されていた。
LKとして問題がありそうだとか、性格が非協調的だとか色々あるが、
マツリが狩りに参加することは、
ポールだけでなく、メンバー全体的にかなりプラスであった。
クレイが言うとおり、
立ち位置や敵の配分など、
ポールが狩りの技術を学ぶ上で、よい手本であったし、
ヒールだけでなく、ブレス速度など、
ヒゲのフォローに回るのに不足ない程度の、
基礎的な支援魔法も覚えていた。
また、LKの役割であるBBによる火力としても、単純に前衛としても申し分なく、
クレイが抜けた分を十分補ってくれた。
下手をすれば、ヒゲよりも役に立つのではないかとジョーカーが言い、
ヒゲと喧嘩になったのは余計だったが、
なんにしても、新しいメンバーが入ったというのはいい刺激になる。
合う回数が増えるごとに無愛想な対応にもなれてしまったポールが、
無邪気に色々聞く事も多かったが、その度に丁寧に教えてくれもした。

ヒゲの希望で、魔法の媒体として使われるカタシムリの皮を集め行くことになり、
大カタツムリ・アンバーナイトを狩りながら、
今日もポールはマツリに、戦い方のコツを聞いていた。
「こいつは殻が硬いっすからね。
 闇雲に叩いても手が痛くなるだけですし、
 何よりコンバタの材料になる中央部分を壊しちまいます。」
さりとて、露出した頭を直接叩けば、いくら温柔なアンバーナイトといっても、
身を守るために全力で襲い掛かってくる。
「だから、殻と身の隙間を狙うんでさ。」
言いながら、マツリは正確に急所を叩き、素早く大カタツムリをしとめて見せた。
「殻自体はでかいっすけど、調合に使える部分は少ないっすから。」
しとめたカタツムリの殻から必要な部分を剥ぎ取り、
それをポールに投げてよこす。
剥ぎ取られたカタシムリの殻は、ポールの手と同じぐらいの大きさで、
1mほどにもなるアンバーナイトから取れるにしては、確かに少ない。
「なるほどー」
言われてみれば、当たり前ことかもしれないが、
ダメージの大きな頭か胴体を叩いて倒せばいいと、単純にしか考えてなかったなと、
ポールは頭を掻いた。
その横で、ジョーカーがうっかり水溜りに足を突っ込みそうになり、悲鳴を上げる。
「んもー これだから湿地はいやなんだよ。」
「ちょっと、ジョーカーさん! 真面目にやってよねっ!」
泥まみれになった靴を振って汚れを落とそうとするジョーカーに、
ヒゲが何故かナヨナヨした声で文句を言う。
「今日の稼ぎで、今晩のあたしのおかずが決まるんだからっ!」
「いや、それはいいけどさ・・・ 何、そのしゃべり方。」
気味悪そうに、ジョーカーがヒゲを見る。
「ベッキーのまねー 
 ベッキーいないとお前、すぐサボるから、雰囲気だけでも出そうかと思って!」
にこやかにヒゲは答えたが、即座にジョーカーが否定する。
「クレイさんは、そんなしゃべり方しない。」
「一人称も、口調も、全然違いますね。」
「むしろ、似せようという心意気が微塵も感じられませんな。」
ポールとマツリも指摘するが、
ヒゲもただ黙って叩かれない。
「見事なフルボッコwwwwwwwww我々の業界ではご褒美ですwwwwwww」
そのマゾヒスト振りをアピールし、反論者のやる気を一気にそいだ。
我々とは、ヒゲと誰なのか。
少なくとも自分ではないと、各自、心で確認するが、
あえて誰も突っ込まない。

「あーもーだりー やる気しねー」
危険なモンスターがでないのをいいことに、
ジョーカーが草むらに寝転ぶ。
つられて、ポールも剣を下ろした。
「天気もいいですしねー」
5月の空はどこまでも青く、頬に触れる風が心地よい。
すぐ近くに、海と見まごう程の湖が涼やかな波の音を立てている。
緩やかな丘陵に青々と茂る道草は夏の到来を予感させ、
端々に見える大カタツムリたちは、皆もくもくと豊富な餌を漁っていた。
これから梅雨に入り、草原の所々にある浅い沼が範囲を広げると大繁殖を始めるので、
そのころには冒険者たちが駆除のために集まるが、
今はまだ、人の影も見えない。
時折、低レベルモンスターとはいえ、乱暴なポイズンスポアが姿を見せるし、
アンバーナイトたちの横を通り抜ける緑色のポリン・ポポリンは、
ポリンより毒性が強く、考えなしに手を出すとしっぺ返しを食らわされる。
また、丘を越えたすぐ近くの森の中には好戦的な亜人・オーク族の村があるのだが、
それでも、壮大な草原はひどく平和で、
風に吹かれた沼がピチャピチャと音を立てているのも、眠気を誘う。
ジョーカーならずとも、ついついのんびりしたくなる。
二人が、休憩に入ったのを見て、
マツリも刀をしまおうか、迷っている。
自分も休憩に入りたいが、
ヒゲがまだ、アンバーナイトを狩っているからだ。
一人だけに働かせるのは気が引けるのだろう。
このLKは意外とまじめである。
「ヒゲさんー 休憩しましょうよー」
ポールが気を利かせてヒゲに声を掛けた。
ヒゲは振り返ったものの、気乗りしないように首を振る。
「しかし、今日中にしっかり稼がないと返済がなー」
「また、なんか借金したんですか。」
ポールの声のトーンが一気に下がる。
「いや、嫁に小遣いの前借したら、利子払えって。」
「どんだけ、尻に敷かれてるんですか。」
ヒゲの嫁がキツイのは、彼女が悪いのではない。
厳しくしないと、ヒゲが無制限に余計なことをやらかすからだ。
そう、聞かされてはいたし、事実そうなのだろうとは思ったが、
ポールは直接彼女に会ったことはなく、
話を聞いたわけでもないので、そこまでしなくてもと、
ヒゲの肩を持ちたくなった。

ヒゲが狩りをやめないのを認め、マツリも別のアンバーナイトに向かった。
ポールも剣を持ち直そうとしたが、
ジョーカーが「いいって、いいって。」と、引き止める。
「そんなに必死になって狩ることないって。
 逆に疲れて効率落ちるよ。」
そういう、ジョーカーの台詞には聞き覚えがあった。
そう、クレイが始めてあったときに言っていた台詞とほぼ同じなのだ。
「そっか。クレイさんに会ったのも、ここだったっけ。」
大体一ヶ月前のことなのに、もう何年も前のことのような気がする。
マツリが「姐さんがなんですって?」と、振り返った。
「オレがクレイさんと、初めて会ったのがここなんですよ。」
ポールがマツリに説明する。

冒険者ギルドの運営する、冒険者アカデミーを卒業してから、
いくつかの低レベル狩り場を転々とした後、
ポールは黙々と一人、アンバーナイトを狩る日々を送っていた。
アカデミー在学中にためた知識とMPで、
剣士に転職するのは問題なかったが、その後の予定が彼には全くなかった。
同期の生徒ともあまり仲が良くなかった上に、
卒業が少し遅れたので、初心者同士、PTを組むことも出来ず、
一人、故郷から出てきた彼には、頼る当てもない。
さまざまな便宜を図る上で、冒険者達が組む個人ギルドに入ろうかとも思ったが、
メンバー募集はいくつもあっても、
どのGが自分に適当であるかが判らなかった。
アンバーナイトは当時の彼には手強く、時々転んで泥まみれになったりしたが、
それでも大きな怪我をすることはなかったし、
初心者のお金稼ぎにとてもいいという話しも聞いていた。
幼い時から冒険者になるために貯めたお金は、もう残り少なかったし、
都会のドライな風に揉まれた田舎育ちの少年は、少し人間不信にもなっていたので、
他に誰もいない狩り場は居心地が良かった。
そんな時、通りがかりに支援をくれたのがクレイだった。

もちろん、初めから仲良くなったわけではない。
すれ違った他の冒険者に、支援をくれるプリーストは偶にいる。
冒険者同士、互いに助け合わねばならないものだから、
そんなに恐縮することはないが、きちんと御礼は言うようにとアカデミーで習った。
だからポールも、そういうこともあるだろうぐらいにしか考えず、
「ありがとうございます。」「いいえ、どういたしまして。」以上の会話もなかったが、
それが一度や二度ではなくなると、また見方も変わってくる。
毎日クレイはポールの前に現れ、
その度に、ヒールや基礎能力向上魔法を掛けるだけでなく、
場合によってはLAなどの戦闘補助魔法による援護など、
手厚い支援をしてくれた。
それらは非常に助かったし、他に話し相手もいなかったので、
一週間が過ぎたころ、ポールは思い切って親切なハイプリに話しかけてみた。
「いつも、ありがとうございます。」
「いいえ、どういたしまして。」
ハイプリの方はいつもの挨拶と判断して、そのまま立ち去ろうとしたのだが、
更に声を掛けてみる。
「あの、いつも、ここを通られますよね?
 何か、理由でもあるんですか?」
今思えば、非常にぶしつけな質問だった。
どこで誰が何をしていようと勝手であるし、
それを逐一尋ねる必要もない。
それでも、ハイプリは気軽に返事をしてくれた。
「すぐ近くにオーク森があるでしょ。
 そこのやつらが持ってる、サイファーが欲しいんだけど、
 最近、乱獲されちゃったから、オークの数自体が少なくてなかなかね。
 それで小まめに通ってるの。」
サイファーと聞いて、思い当たったポールは、
カタツムリが落とした魔応石をアイテム袋から引っ張り出した。
「サイファーって、青い魔応石ですよね。
 もしかしてこれですか?」
「いいえ、それはガレットです。」
あっさりと否定される。
ポールとしては、ハイプリの支援に御礼が出来ないかと、
手持ちの札を漁っただけなのだが、
初心者なだけでなく、知識のなさを披露する羽目になってしまった。
しかし、しょんぼりと肩を落とした新米剣士はハイプリの興味を引き、
今の状況や、装備など、いくつかの質問をされた後で、
そのまま狩りを手伝ってもらうことになった。
更にクレイは、処分に困っていた戦利品の買取仲介をしてくれ、
次の狩りへの誘いまでくれた。
三次職にもなる高レベルの冒険者が、自分のような初心者に付き合っても、
利点があるわけではないのは判るので、
ひどく恐縮したポールに、彼女は言った。
「この年になると、
 そんなに細かいこと考えて狩らなきゃいけない理由がないし、必要もないし、
 まあ、気にしない、気にしない。」
そう、屈託なく笑うと、冒険者全体にいえることなのか、
特に彼に対してのアドバイスなのか判らないが、
こう付け加えた。
「君も、頑張るのはいいし、頑張らなきゃいけない時期だは思うけど、
 そんなに必死になっても、逆に疲れて効率が落ちるよ。
 あんまり無理しないようにね。」
誰も頼る当てがなく、
むきになって、自分一人で何とかしようといていたのを見透かされたようで、
ドキッとしたのを、ポールは覚えている。
その後、ドスコイ喫茶のメンバーへ紹介や、
それまで借りていた冒険者アカデミーの寮より安い下宿先の紹介、
狩場や装備のアドバイスと、散々世話になって現在に至る。
間に一悶着起こったりもしたのだが、
クレイに出会ってから、ポールのレンジャーとしての生活は非常にスムーズで、
一人でアンバーナイトを狩っていたころの不安が、
まるで悪い夢だったようだ。

「たった、1ヶ月前の話なんですけどね。」
個人ギルド・ドスコイ喫茶の居心地は非常によく、
もう何年もすごしているかのような感じまでする。
もし、あの時クレイが支援を掛けてくれなかったら、
一体自分はどうなっていたのだろう。
まだ、この草原で一人、アンバーナイトを狩っていたかもしれない。
そんな感慨にポールが浸っていると、
ジョーカーも懐かしそうに当時の話をした。
「クレイさんがさー 急にもう一人入れていいかって言うから、
 何かと思ったんだけどね。
 聞けば、初心者も初心者で、知識も装備もなけりゃ、
 情報掲示板の使い方も判ってないし、
 なにより、通りがかるたびに、カタツムリ相手に同じやられ方してて、
 『ああ、こりゃほっといたら駄目だって思った。』って、言ってたよ。」
本当に、クレイに拾われなかったら、一体どうなっていたのだろう。
「拾ってもらって、よかったっすね、ポール君。」
マツリの視線が、いつもより冷ややかな気がする。
「エヘッ。」
にこやかに笑って、ポールは頭をかいた。
ヒゲの笑ってごまかせ精神は、確かにポールにも浸透しているらしい。

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